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電通の「日本の広告費」によれば、2009 年の日本国内全体の広告費は2008 年より11.5%減の5.9 兆円であった。2007 年は7.0 兆円だったので、広告市場は2 年で15%縮小した。
折込広告は2008 年より11.6%減の5444 億円と、広告市場の縮小にスライドして減少した。2009 年は衆院選や家電エコポイント制度、エコカー減税などのイベントやトピックはあったが、世界的な不況による企業の広告費支出抑制の影響が大きかった。そのような状況のなか、2009 年はインターネット広告費が新聞広告費を抜くトピックがあった。
減少したとはいえ、折込広告はテレビ(1 兆7139 億円)、インターネット(7069 億円)、新聞(6739 億円)に次ぐ規模があり、依然として「第4 の広告メディア」の位置づけにある。
一世帯一カ月当たりの平均折込枚数は527.7 枚(首都圏)である。2006 年の648.9 枚をピークに3 年連続で減少した。2006 年まで長期安定的に枚数を増やしてきた折込広告は、2 年連続の大幅な落ち込みで一気に約15 年前(1996 年、524.1枚)の水準に戻ってしまったのである。
枚数減少のほかにも、サイズの縮小化や減色化、裏白など企業によるコスト削減の影響があり、折込の広告費は枚数減以上に減少した。折込広告のサイズはB4(約6 割)とB3(約3 割)で約9 割を占めるが、2009 年はB4 の8.4%減に対し、B3 が15.1%減といったサイズの縮小化の影響があった。
出稿主の業種別の状況を見ると、全体の半分弱を占める小売業が7.7%減、1/3 弱を占めるサービス業が14.4 % 減、12 % を占める不動産業が27.7%減だった。
主力の小売業は売上高が減ると対策に新聞折込広告を活用する傾向があり、不況でも落ち込み幅は他業種より小さい。サービス業は有効求人倍率の低下による求人連合広告減少の影響である。
「シュフモ」はニフティ、三菱商事、サンケイリビング新聞社の3 社が共同運営する会員制の主婦向けケータイ電子チラシサイトだ。2008 年11月にオープン、会員は既に約70 万人いる。チラシ情報をメインに、主婦のコミュニティサイトやレシピなどをラインナップする。広告枠は満稿で順調に売れ、今後はさらに通販に取り組むほか、メーカーからの掲載料収入も追求するという。
マーケティング会社のポイントプラスは、小樽商科大学の協力を得て、商品がチラシに掲載された場合とされなかった場合の違いの売り上げの差をPI(Purchase Index)倍率として表し、チラシの効果測定に取り組んでいる。顧客から選ばれる媒体には、費用対効果の視点が不可欠な時代だ。
折込広告の器となる新聞だが、米国は日本とは異なり全国紙が少なく、圧倒的に州や都市の地方紙が多い。しかも販売収入20%、広告収入80%という経営体質だったため、不況による広告収入激減で多くの新聞社が経営不振に陥っている。
ところが、ニールセンの調査によると、米国新聞折込広告の市場は不況のなか11.5%も伸びたという。日米の特徴的な違いを挙げておく。折込広告はページ物が多い。新聞社が直接に折込広告を集めている。郵便料金の安さを生かして特定地域にデリバリーする仕組みが発達した。不況でクーポン付広告が増えた、などである。
(「JAGAT info」2010年7月号 プリンティング・マーケティング研究会)