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[若手印刷人 リレーエッセイ] 軽印刷の業界もしっかりと未来を見極め、時代に合った商品のイメージを膨らませ、デジタル化、情報社会にすばやく対応できるシステムで商品を製造し、人の心に響く魅力ある商品の企画・製造・生産・販売を心がけることが不可欠であると考えています。
大阪市内天満で、創業48年目を迎える弊社は軽オフ印刷を主流とし、「名刺1つからでもお客様により早くお届けする」をモットーとし地域密着型の営業に取り組み、今日まで継続してまいりました。
創業当時、当社の設備は、プラテン印刷機1台のみで生計を立てていた、いわゆる「活版印刷所」でした。もちろん個人商店ですので、経営は家族で切り盛りをし、祖母が活字を拾い、父親が組版・印刷をしていたことを記憶しています。私が小学生の頃、時代の流れとともに、当社の設備は活版印刷から軽オフセット印刷へ変化し、活字から写植機へと入れ替りお店の中の大半を占めていた「活字」を処分することとなりました。当時を振り返ってみると社長の一大決心であったと思います。
その当時はお客様から原稿や版下を持ち込んでもらい、商品が出来上がり次第連絡をし、引き取りに来ていただくことがあたりまえだったと聞いています。いわゆる活版印刷・軽印刷業界における、昔ながらの受け身営業体質であり、個人商店であるがゆえの人員不足や高齢化の問題でもあったと思います。それは現在も一般的にあまり変化がない様にも感じられます。
家業を手伝うようになり約16年が経ちますが、入社当時まず、疑問に感じたことは、やはり業界における受け身の営業スタイルでした。引き取りに来ていただくお客様との会話の中で、「名刺やハガキ、軽印刷等は注文後すぐに欲しい」「できることなら原稿の引き取りや打ち合わせ、商品の配達も来て欲しい」とのことを多く聞きました。
現在でこそあたり前のことも軽印刷の業界では、「お客さんが持って来て、引き取りも来てくれるから…」という甘い考えもあり、そこは軽視されがちな部分でもありました。
現在のモットーである「名刺1つからでもより早くお届けする」という地の利を生かしたスタイルが確立したのもそういった背景があったからこそ、現在まで継続することができたのではないかと思います。名刺1つにも徹底的にこだわり、お客様のニーズにできる限りお応えしていこうと決心し、さらにデリバリー面や営業面、迅速な対応を充実させることに注力し、お陰様で「名刺・軽オフのことならフィッシュに任せておけばなんとかしてくれる」との声を少しずつ頂けるようになり、本当に良かったと皆様に感謝しております。
そして今後、軽印刷の業界もしっかりと未来を見極め、時代に合った商品のイメージを膨らませ、デジタル化、情報社会にすばやく対応できるシステムで商品を製造し、人の心に響く魅力ある商品の企画・製造・生産・販売を心がけることが不可欠であると考え、昭和57年に現在の社名『株式会社 FISH』に変更致しました。FISHとはF:Future(未来を見極める力)、I:Imagination(時代に合った想像力)、S:System(あらゆる状況に対応するシステム)、H:Humanity(商品を通して築く人とのつながり)を略してネーミングいたしました。
48年の間には当社も同業他社同様コンピュータの発展による「ペーパーレス化」の波にのまれ、インターネットの普及により名刺はもとより、印刷物が安価で簡単に手に入るようになり、軽オフ業界にも転機が訪れました。高齢化や後継者問題による廃業は現在も深刻です。そしてオンデマンドの登場による脅威は常に話題の中心となっています。
印刷物が減少し、コピー主流に変化してきた今、いかに軽オフという隙間産業が生き残っていけるかを日々考えていますが、決して名刺や軽印刷が消えてしまうことはないと思っています。今こそ「温故知新」の精神を忘れずに、今まで経験してきたことを生かして、アナログ的な部分を消滅させるのではなく、活版印刷独特の風合いや仕上がりを現代風にアレンジし、伝えていきたいと考えるようになりました。印刷業界のベテランの方には懐かしく、活版印刷を知らない世代には斬新に思えるような商品を創っていきたいと思っています。
例えば、日本の伝統的な文化である「和紙」や「金箔」等の技術と活版印刷を組み合わせた商品等、新旧が交ざり合い魅力のある商品創りができたらなあ、と思っています。
デジタル化がどんなに進んでもそれを使うのは「ひと」であり、結局は「ひと」と「ひと」とのコミュニケーションがなければコンピュータはただの機械でしかありません。
そこで名刺や新しい何かを通して少しでも「ひと」と「ひと」とを繋ぐお手伝いができればという思いを込めてこれからも社員一同、会社発展、印刷業界発展に貢献できるよう精進して参ります。