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印刷物を、Webを通じてサービスできるように調達規格も変化しつつある。
韓国イルジンPMS 株式会社
李 在秀
最近、韓国統計庁が発表した『2009年基準の事業体基礎統計調査報告書』によると、1人以上の全国印刷業及び印刷関連産業の国内印刷物の総生産額は、2008年(9兆5000ウォン)対比で8%増加して10兆3500億ウォン(≒9000億円)となった。2009年まで登録された1人以上の印刷業及び印刷関連事業者の数は1万6709社で、2007年の1万7767社から5.9%の減少となった。
2008年の金融危機で落ち込んだ生産額は例年水準に戻ったものの、事業者数をみると2005年を頂点としては減少傾向にある。2009年の地域別の事業者数はソウル首都圏に44%が集中しており、以下は釜山、大邱の順に多い。10人以上の印刷業及び印刷関連産業の事業者当たり生産額は30億1480万1000ウォン(≒2億5000万円、)で前年比20.3%増、従業員1人当たりの生産額は1億3291万8000ウォン(1500万円)で前年比15.0%増、従業員1人当たりの人件費は2487万0000ウォン(≒200万円)で、前年比8.4%の増加となっている。各統計とも2003年対比では30%前後の増加となっている。
◆印刷産業の現位置
印刷メディアの先行きの不透明感が増している。5月の初めには、ワシントン・ポストが世界的な雑誌である『Newsweek』誌の売却を検討しているというニュースが流れた。韓国ではキオスクでの印刷メディア販売率は43%も下落した。このような厳しさを増す環境では、印刷産業の置かれている現状を経営次元で振り返ってみる必要がある。しかし、将来的な印刷メディアの限界性やデジタルメディアに対する情報共有の遅れ、さらに多様化する印刷産業の将来像を描ききれないこと、コミュニケーション能力が高い人材育成に消極的であったことなど課題は多い。にもかかわらず、もはやそれらに対応する余力もほとんど残っていない。ユビキタスメディアの進化が印刷産業と連携されている部分も、現状では極めて制限的である。また、紙消費量は増加しているなかで、印刷会社の稼働時間が減っており、その状況が掴め難い。
◆e-Bookの変化
韓国工学院は2009年に各種重要技術23種類の中で、社会的に波及効果が大きいものとしてe-Bookを選定した。今年初めから6月13日まで韓国最大手Kyobo文庫での電子書籍の販売数は昨年同期より80.5%増加している。年代別にみると、20代40.3%、30代27.1%、40代20.8%、50代8.3%というように、若い世代ほど購入する割合が高かくなっている。テキスト主体のe-Book端末機の限界に対して、iPadの発売によって、電子書籍とNet Book(amazonなど)における新たな戦いが始まったように思えるが、要はコンテンツ確保と編集技術で勝負になる。e-Bookでも動画像及びマルチメディア送出の可能なコンテンツは、Smart PhoneやTVまで利用できるように変化していくだろう。
◆印刷メディアと技術融合
雑誌と新聞、教科書のデジタル化かつマルチメディア化によって、記録物と出版物に対して中長期的な代案が必要である。物量的な問題で片方が減ると片方は増える生態的な現象を業界は察知している。伝統印刷とデジタルがぶつかる雑誌、新聞、書籍、商業印刷及び広報物には、既に大型出版グループがモバイルとオンライン市場に進入してから、印刷メディアの規模が縮小されている。印刷会社は莫大な資金を投入しており、顧客側には印刷が装置産業であるということの厳しさを分ってもらえなく、自動化、標準化、CMS構築したとは言っても、それで納入量確保と印刷単価を保証されることもない。印刷経営においてマーケティングは必須であり、その能力と印刷設備投資は比例したが、環境変化にともない営業方針を再検討して方向性と範囲をどうするか決める必要がある。顧客の新しいニーズや差別化されたサービス要求、高品質を保証するような投資を続ける悪循環を避けるためには、同業種間で連携することで解決できるような工夫をしている。
印刷業界では環境変化に対する共同構想と、知識産業としての人材養成も共同で行っていく必要性を感じ始めている。今後、印刷経営は社長一人でするのではなく、教育で養成された社員と一緒になって経営にあたる必要を認識している。印刷は記録、保存、伝達の3要素が揃っていなければならないが、印刷業者間での役割分担の必要性を認識している。デジタル化に対応する戦略で印刷産業はマルチメディアを具現するシステム新設と人力養成に比重を置く傾向が強まっている。これができれば、マルチメディア対応が紙印刷の納品より販売比重を高くできるだろうという考えである。
様々な情報を迅速に読者へ伝えるのが印刷メディアの役割であるが、印刷物を納品すれば、それで仕事がすべて終了したということではなく、印刷物を、Webを通じてサービスできるように調達規格も変化しつつある。
※参考資料
Printing Korea、印刷文化・統計庁資料