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印刷会社の収益性は長期にわたり低落傾向にあり、コストの「見える化」、そしてコストをコントロールして利益を生み出すようなマネジメント、すなわち原価管理が喫緊の課題となっている。
とはいえ印刷業界で原価管理の必要性が叫ばれたのは今に始まったことではなく、例えば1983年7月には全日本印刷工業組合連合会から「原価計算ガイド」が刊行され、業界への普及活動も長年にわたり行われている。
必要性を強く感じながらも、なかなか定着しない原価管理であるが、まずは基本をおさらいしたい。
管理会計における代表的な原価管理の手法としては、標準原価方式と実際原価方式がある。JAGATが提唱しているPMP(Profit Management for Printers)システムでは標準原価方式を採用しているが、原価管理の目的は理論の正しさの追求ではなく、結果として企業収益を上げることであるので、自社の管理レベルや(実績把握の)システム環境などを考慮して、自社に適した方法を採用し、細部は常にアレンジしながら運用することが肝要である。
身の丈に合わない方式を採用し、データ収集に振り回されるようでは本末転倒である。
原価とは
原価とは「企業が一定の財貨を生産し販売するにあたって消費された経済価値」と定義される。この定義によれば販売費及び一般管理費も含まれることになるが、一般には製造原価を指す。製造原価は、材料費、外注費と労務費と製造経費からなる。
・「製品原価」と「期間原価」(原価を捉える単位による分類)
製品原価とは、「製品単位」に原価要素(各種費用)を集計して出す原価である。期間原価とは「組織単位」で一定期間に発生した原価要素を集計した原価である。印刷業一般で強く意識されているのは「製品原価」である。製品1点ごとに売値と製品原価とを対比して利益を把握したいからである。
・「実際原価」と「標準原価」(原価の性格による分類)
原価をその性格で分けると実際原価と標準原価とに区別される。実際原価とは、実際に製造するのにかかった材料費、労務費、製造経費をもって計算した原価をいう。標準原価とは科学的分析または統計的な傾向から算出した、あらかじめ基準として設定しておく原価をいう。
標準原価は、実際に発生した原価が妥当だったのか否かを判断する基準として活用したり、事前見積もりの積算根拠として用いられたりする。
・「総合原価計算」と「個別原価計算」(原価の製品別計算方式の分類)
製品原価を計算する方法として総合原価計算と個別原価計算がある。総合原価計算は、自動車のような単一製品を繰り返し生産する製造業のような場合に適しており、集計単位の期間内に発生した全ての原価要素を集計し、その期間に完成した製品の数量で割って製品1個当たりの原価を求める。個別原価計算は受注生産型の生産方式に適しており、その製造オーダーごとに原価を集計して求める。
印刷業界の場合、受注1品ごとに仕様が異なるので後者の個別原価計算が使われるのが一般的である。