本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
意外に使われていないスタイル機能を使いこなす。
意外に使われていないスタイル機能
今回はInDesign の「スタイル機能」について取り上げたいと思う。InDesignには段落スタイルや文字スタイルをはじめ、先頭文字スタイルや正規表現スタイル、オブジェクトスタイル、表スタイル、セルスタイルなど、実に多くのスタイル機能が用意されている。これらの機能すべてを理解し、使いこなすのはなかなか大変なことだと思うし、それなりに学習も必要だ。しかし、InDesign を使う以上、最低でも使いこなしてほしいのが段落スタイルと文字スタイルだ。
なぜこんなことを言うのかというと、最近セミナーなどで全国各地に呼ばれて話をさせていただく機会が多いのだが、その際に「スタイル機能を使ったこと、ある方は?」と質問させていただくと、使ったことがない方が意外に多いのにびっくりする。時には2.3 割の方しか手が挙がらないケースもあるのだ。現在では、Illustrator にも段落スタイルや文字スタイルの機能が搭載されているので、もっと使われていると思っていたのだが、予想外の結果に戸惑ったというのが正直な気持ちだった。
作業時間の大幅短縮に直結
ポスターなどのように、文字が少なく、テキストに同じ書式を適用するといったことがほとんどないのであれば、スタイル機能を使う必要はない。しかし、見出しやキャプションなど、同じ書式を適用するテキストが何回も出てくるようなドキュメントの場合、必ず使ってほしい機能が「段落スタイル」だ。一度スタイルとして登録してしまえば、後はスタイル名をクリックするだけでその書式が適用できるので非常に便利。
また、作成方法も非常に簡単だ。スタイルとして登録したい書式をテキストに適用したら、そのテキストを選択したまま[段落スタイル]パネルの[新規スタイルを作成]ボタンをクリックするだけ。後は、このスタイルを他のテキストに対して適用していけばいいのだ。いちいち手作業で書式を設定していく必要がなくなるので作業時間も大幅に短縮できるし、手作業によるミスも減らすことができるというわけだ。
なお、ここだけテキストを強調したいといったように、部分的に書式を変更したいケースでは「文字スタイル」を使う。文字スタイルの作成方法も、段落スタイルと基本的に同じだ。一度作成した文字スタイルは、クリックするだけでその書式を選択しているテキストに反映できる。このように、段落スタイルと文字スタイルはInDesign を使用するうえで基本とも言える機能なので、ぜひ使ってほしい。
テキスト修正で真価がわかる
段落スタイルや文字スタイルは、何もテキストに対して最初に書式を適用する時だけに便利な機能というわけではない。むしろ、その真価を発揮するのは、テキスト修正時であると言える。例えば、校正で赤字が入り、見出しの文字サイズやカラーが変更になったとしよう。見出しに対して段落スタイルを適用していなければ、複数ある見出しの書式を1 つずつ手作業で修正していかなければならない。しかし、あらかじめ見出し用の段落スタイルを作成して運用していれば、段落スタイルの中身(ここでは文字サイズやカラー)を変更するだけでよいのだ。見出しが何十個あろうと、修正を一瞬で終えることができる。スタイルを作成して運用することが、いかに重要かが理解できるだろう。
一歩進んだスタイルの運用
最低限使用してほしいのが「段落スタイル」と「文字スタイル」だが、さらに「先頭文字スタイル」や「正規表現スタイル」も使いこなせば、一歩進んだスタイル運用が可能となる。
例えば、対談記事で段落初めに名前が来るようなケース。名前のみフォントやカラーが変わる場合、これまでは文字スタイルを使用して運用していたと思 う。しかし、数が多いとこの作業も面倒だ。このような場合には、先頭文字スタイルを使うと自動的に名前部分のみ文字スタイルを適用できるのだ。
ここでは詳細な作成方法は省くが、ほ更したり、丸カッコで挟まれたテキストのみ書式を変えたり、といった場合には正規表現スタイルが威力を発揮する。これらの機能が優れているのは、後からテキストを修正する場合でも、自動的に文字スタイルを適用してくれるので、手作業によるミスが起こらないという点だ。すでに段落スタイルや文字スタイルを使いこなしている方は、さらにその先へ進んでほしい。きっと幸せになれるはずだ。
使わないと損をする最重要機能
使いこなせばこなすほど、作業時間を短縮できる優れもの、それが「スタイル機能」というわけだ。使わないと損をしていると思った方がいい。
ちなみに、わたしはInDesign を使いこなすうえで一番重要な機能が「スタイル機能」だと思っている。「すべてのテキストに対して段落スタイルを適用する」ぐらいの心構えで作業すべきだろう。
特に今後はウェブとの垣根もますます低くなり、さらにはEPUBへの書き出しも重要になっていくはずだ。ウェブの世界では構造化という話をよく聞くが、紙でもそれは同様。その際にポイントとなるのは、やはり段落スタイルだ。使ったことのない方はぜひ使ってみてほしい!