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中国経済の発展とその戦略
中国経済の世界経済に占める存在感は高まり続け、2010年は日本を抜き、世界第2位になることが確実視されている。長期的に2025年には米国をも抜き、世界No.1になるとの見方もある。
中国は人口が多いということで有力市場と見られがちだが、早くも2015年から人口オーナス(高齢人口が増え、生産人口は減り、人口動態が経済の重荷になる状態)の時代に入る。人口の多さや人口増加が景気経済を牽引する時代はまもなく終わる。
従って、中国は人口オーナスに転換するまでに、いかに経済を効率化、合理化、生産性向上するかを重点施策と捉え、これを2011年から始まる第12次5ヵ年計画に織り込む。
中国の政府や各種論調は、中国が国家の品格や生産品質が真のNo.1になるのは2050年との見方が大勢という。こうした施策や論調は大国中国のしたたかな一面を感じさせる。
中国の印刷市場概況
中国の印刷業界は市場規模約5兆円、印刷企業数9.7万社、従業者数340万人とされる。3大印刷地区がある。広東省、深センを中心とした①珠江(しゅこう)デルタは印刷の集積地帯、上海を中心とした②長江デルタは国内向け印刷、包装印刷、北京・天津が中心の③環渤海経済圏は出版印刷に強みを持っている。
出版社は500社あるが、規制検閲もあって市場規模は小さい。フリーペーパー市場は既に飽和という。クチコミ情報が重視されるので、チラシはそれほど普及していない。市場が大きいのは包装・パッケージ印刷である。
郵便物はDMが約7割であり、年間90億通ある。印刷の総量が増えるなか、印刷サービス業が台頭し、店舗を構えて印刷受注を集めている。
国際ビジネスへの取り組み
中国の印刷技術や印刷物の品質は相当に高まっているが、やはり日本の印刷の商慣習で進めると、とんでもない印刷物ができ上がる可能性が高いので、気をつける必要があるという。色の認識はカルチャーギャップもあるし、どの程度をでき上がりとするかの取り決めも簡単ではない。
印刷環境は日本に似てきているようで、PDF渡し、支払いは基本的にL/C(信用状による支払い)、一部前払いもあり、現地納品の場合は増値税(日本の消費税に近い)17%を考慮する。
進出を考える際は、まず地域とパートナーを決める。国土は広大だし、中国は人脈社会だからだ。できるだけ総経理(社長)と話をすると話が早い。コンプライアンスを考慮する必要もあるが、こちらもリスクを取って即断即決していくと話が早いし、信頼もされるという。
中国の特性とビジネスの進め方
成長の中心は沿岸部から内陸部へ移り、インターネット人口は人口の30%の4.2億人、携帯電話は7.4億台に達し、メディア環境は相当に先進国に近づいてきた。
中国人は日本人と比べて協調性が低く、チームワークで仕事を進めることが得意ではない。反面、上昇志向は強く、自己実現に向けた努力は惜しまない傾向にある。
中国で成功するには、このような特性を理解した上で、産学連携などのルートで信頼できる即戦力人材を確保し、技能評価制度を明確化して向上心を刺激し、システマティックな品質管理体制を整備する必要があるようだ。
プリンティング・マーケティング研究会
2010年10月1日開催セミナー「アジア・中国印刷市場のチャンスと利活用」より (藤井建人)
<関連セミナー>
2011年2月2日開催 PAGE2011カンファレンス
「印刷会社の海外利活用のポイント」 ~中国・韓国・タイ、印刷取引の事例から~