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韓国は2013年から農漁村部の小学校を始まりにして、デジタル教科書の普及を開始する。
韓国イルジンPMS 株式会社
李 在秀
教育科学技術部はデジタル教科書プロジェクトのために、現在の初等4学年から中等1学年まで18個科目のデジタル教科書を製作して、全国150余りの学校をモデル学校に選定してテストを行っている。
デジタル教科書はテキスト中心の既存の紙の書籍型教科書とは違いタブレットPCを利用して動画と写真、インターネット上の膨大な資料などを共に活用できる、いわゆる「本なし学校」を作るという構想である。 これは教育パラダイムを根本的に変えることになる。 しかもタブレットPCが洪水のようにあふれ出ながら価格が急落していていくと、近い将来にこれまでの書籍教科書は消えるしかないのかということで、業界の関心が集中している。
政府はデジタル教科書を活用して学校内で学業達成度を高めて塾や予備校などの私教育の弊害を減らし、学生個人の家庭環境に伴う成績格差を最小化するという計画である。 これに伴ってデジタル教科書は電子ブックと電子ブック端末機、電子黒板など関連市場にも好影響を及ぼして毎年数兆ウォン台のIT新規市場を作ると予想されている。
国立忠北大の弁(ベン)教授が過去2年間、デジタル教科書モデル事業を進行中である全国110校の小学校の児童1万6700人を対象に、デジタル教科書の学習効果を3回にわたって分析した結果、デジタル教科書を使った学生たちが、一般の紙教科書を使った学生たちより良い成績を修めたという調査結果が発表された。 特に国語、社会、科学科目の効果が明確だった。2008年には農山漁村部の学生たちの効果だけ確認されたが、2009年研究では都市の学生たちにも効果が現れた。
この研究で注目される点は、デジタル教科書が私教育の学業達成度や学習態度に及ぼす影響力を減らすと確認されたという点である。 デジタル教科書に対する学習主導者の満足度も高く、教師の87%、学生の89%が肯定的に評価していることが確認された。
デジタル教科書が成功的に位置づけするためには、「デジタル+教科書」という単に紙の教科書をデジタル化するという概念から脱し、デジタル教科書の新たな概念を再確立しなければならない。デジタルは20世紀産業時代を編み出した物理的な富の価値を跳び越えて、情報通信技術で武装したオンラインの新天地という意味が含まれている。 特にリアルタイムな情報交換のためのデータ伝送は基本である。反面、従来の教科書は著作権という厳格な法的権利が保障された書籍形態で、きわめてオフライン的な性格が濃厚な媒体だ。 著者が許諾しなければいかなる形態の加工も不可能だ。
このままではオンラインとオフラインの不便な同居になる可能性が大きい。デジタル教科書の成功のためには、書籍教科書の固定観念を跳び越えなければならない。 現在、実現されているデジタル教科書は教師たちの教案作成はもちろん、多様なデジタル資料を動員して授業を準備できるように各種機能が用意されている。必要な場合には、学生たちへの課題物も教科書の内容に含むことができる。もちろん教科書内容の通信機能も含まれている。技術面だけを見れば教室という物理的な壁を跳び越えたと言える。しかし現実は違う。著作権の壁に閉じ込められて、単純に書籍型教科書の内容をデジタル化したものがデジタル教科書ということになっている。 デジタル著作権に対する議論は世界的な検討事項である。 著作権者と利用者の全てが満足できる著作権に対する課題が解決しない場合には、書籍型教科書は家に置いて、教室だけでデジタル教科書を使用して授業を行うという中途半端プロジェクトになるほかはない。
デジタル教科書で授業を受けることになる学生たちはTGIF(ツイッター・グーグル・アイフォン・フェイスブック)を活用して時間と空間の壁を跳び越えてコミュニケーションするいわゆる「デジタル ネイティブ」である。アナログ世代が一度も行ったことのない新天地へ踏み出す開拓者である「デジタル ネイティブ」が望まないデジタル教科書ならば、学習意欲をかきたてる前に廃棄処分にされてまた血税浪費という非難をまぬがれないような気がする。
※参考資料
韓国教育科学技術部