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InDesignから書き出すPDF
様々な用途で使われているPDF
PDFとは、Adobeが開発・公開した規格でPortable Document Formatの略だ。どのようなマシン環境でも同じように表示可能なフォーマットで、最近では官公庁や金融機関をはじめ、様々な企業のビジネス文書としても用いられている。PDFを閲覧するリーダー(Adobe Reader)は無償で配布されており、現在ではほぼすべてのパソコンで表示可能な形式といっても過言ではない。また、文書だけでなく表計算シートや画像、あるいは動画といった異なるファイルを1つのPDFとしてまとめたり、フォームの作成や配布、回収、電子承認、コメントの記入といったことも可能だ。
このようにビジネスユースとして大いに活用されているPDFだが、もちろん印刷業界でも、主に校正用途と出力用途に使用されている。今回はそれぞれのPDFの用途について考察してみたい。
校正用途としてのPDF
筆者は校正のやり取りの多くをPDFで行っている。これまでのようにプリントしたものをクライアントに届けるのに比べ、時間的、コスト的にも非常にメリットがあるからだ。もちろん、デザイン・レイアウトしたそのままの状態を確認してもらうことができるし、またメールに添付したり、サーバーを介して手軽に送信することもできる。これにより、遠隔地のクライアントとの仕事も問題なくこなせるようになった。
色校正で色味などを正確に見てもらいたいといった用途以外では、PDFをやり取りした方がはるかに効率的で便利なのは間違いない。私の周りの同業者にも聞いてみたところ、徐々にPDFによる校正も増えてはいるようだが、まだまだ営業がクライアントにゲラを持参しているケースも多いようだ。確かにクライアントと直接顔を合わせることで、色々とコミュニケーションを図ることができ、別の仕事につながるといったケースもあるとは思うが、校正のみを目的とする場合には、できるだけPDFでやり取りした方が効率的だ。赤字もPDF上にコメントしてもらい、FDFでやり取りすればさらに良い。FDFとはコメントのみを書き出したもので、ファイルサイズも非常に軽いからだ。赤字の入れ方が分からないクライアントには、注釈の入れ方を教えるなどしてもいいだろう。注釈自体は非常に簡単に入れられるので、ぜひPDFによる校正のやり取りを増やしてもらいたい。大幅なコストダウンにつながるはずだ。
出力用途としてのPDF
欧米では当たり前となっているが、日本ではまだまだ少ないのがPDF入稿だ。PDFは出力用のフォーマットとしても優れており、PDF入稿が可能な印刷会社の場合、筆者はすべてPDFで入稿をしている。入稿後のデータ修正は基本的にできないが、入稿用ファイルは1つだけで済むので、リンク画像やフォントの添付漏れといったミスも起こらない。また、ファイルサイズも軽くて済む。もちろん、きちんと出力可能なPDFを作成する必要はあるが、現在では簡単な手順で問題のないPDFファイルを書き出すことが可能。基本さえ理解していれば問題ないはずだ。
とは言っても、PDF入稿に慣れていないと不安があるのも確か。そこで、PDF書き出し後にはAcrobatで必ずチェックするようにして欲しい。現在のAcrobatには、プリフライト機能をはじめ、出力プレビューや透明の分割・統合プレビュー、さらにはプロパティで使用フォントのチェックもできる。これらのチェック機能を使って確認すれば、出力時に問題が起きるといったことはまずない。OSや制作するアプリケーション、フォントの縛りもなくなるので、一度、PDF入稿に慣れてしまうと、もう二度と戻りたくなくなるはずだ。まだPDFを使っていないという方は、ぜひ試して欲しい!
今後に向けて
現在、出力用の規格としてはPDF/X-1aが最も使用されているかと思う。画像はすべて埋め込まれ、カラーはCMYKもしくは特色のみ、そして透明部分はラスタライズされているので、問題が起きにくいからだ。
しかし、Adobe PDF Print Engineの普及に伴って、今後は徐々にPDF/X-4が使われていくだろう。PDF/X-4では、透明効果やレイヤーを保持することができ、RGBワークフローを組むことも可能だ。Adobe PDF Print Engineが搭載されたRIPでは、これまでとは比べ物にならないくらい高速に処理できる。筆者も何度かPDF/X-4で入稿したが、一度も問題は起きていない。可能であるならば、ぜひチャレンジしてみて欲しい。
とは言っても、PDFであれば問題が起きないというわけではないので注意が必要。画像の解像度が足りなかったり、ヘアラインが混じっていたり、誤ってオーバープリントが設定されていたりと、人的なミスまではカバーしてくれないのだ。そのため、最終的には人間の目できちんと確認することも忘れないようにしよう。きちんと運用すれば非常にメリットがあるのがPDFだ。皆さんの仕事にも、ぜひ役立てて欲しい。