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2月2日のPAGE2011カンファレンス「2011年の印刷市場展望」では、広告市場とメディア環境、印刷用紙の需給や国内経済、印刷メディアの最新状況について意見交換した。
広告市場、メディア環境、用紙需給の状況はいずれも印刷市場と密接な関係にあり、相互に影響を及ぼし合っていることは言うまでもない。メディア環境は印刷メディアの位置付けを左右するし、広告市場は特に商業印刷へ大きな影響力を持つ。用紙は印刷製品の主原料である。
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メディア環境が大きく変わっている。2010年はGREE、モバゲーのようなソーシャルゲーム市場が短期間で急拡大、一大有力市場を形成した。Twitterが大ブレイク、日本ではもう一つだがFacebookも世界のメディア界を席巻した。電子書籍の具体化、新聞の電子化という方向性も示された。
電通の井上忠靖氏は、情報流通が大きく変化したと言う。マスメディアは、かつては先発完投型ですべての役割を担う万能メディアだった。しかし現在はゲーム中盤までを確実に作る役割であり、中継ぎメディアや抑えのメディア等と連携してゲームを作る。メディア多様化はエース=マスメディアの役割を変えたのだ。
同社の調査 によると、iPadの購入は紙の本の購読冊数に現時点で影響を与えない。しかも、印刷版に加えて電子版を購読する人が多く、印刷版と電子版の合計購読冊数は大幅に増加する。調査結果では“通読”の割合は印刷版が有利なことも裏付けられたという。役割の何が変わるのか、冷静な視座が必要である。
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印刷用紙の内需動向は印刷の実需を推定する有力な手がかりだ。日本製紙連合会の長谷川祐気氏によると、印刷・情報用紙の内需推移は3局面に分けて見ることができる。2000年までは成長期、2007年まではフラット化期、2008年と2009年がリーマン・ショック後の断層期である。
2010年の内需は▲1.7%と大幅な需要調整期は終えたものの、印刷・情報用紙全体では4年連続の減少となった。また、リーマン後の落ち込みは先進国共通だ。品種別には、非塗工紙は中・下級紙の不振、塗工紙は薄紙化、低グレード化、情報用紙はPPC用紙を中心に比較的堅調と、動きは市況を反映している。
日本製紙連合会は、2011年印刷・情報用紙の内需見通しを2010年比▲1.4%と見ている。ピークだった2000年より約12%低い水準だ。主たる内訳は、出版不況の継続で非塗工紙▲2.4%、商業印刷の落ち込み幅縮小で塗工紙▲1.0%、PPCの堅調とフォームの不振で情報用紙▲1.2%である。
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2011年度のGDP成長率は前年度より鈍化がコンセンサスで、印刷・情報用紙の内需は5年連続の減少が予想される。一方、広告市場は回復傾向が確実視され、折込チラシなどの印刷メディア需要減は一部で下げ止まり感が出てきた。諸与件を勘案して2011年度の印刷ビジネスをどう読むか、有意義なセッションとなった。