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2010年の韓国印刷業界は「構造調整を通じて印刷会社の数を減らすことだけが印刷産業が生き残る道」ということが話題になるほど厳しい年でもあった。
韓国イルジンPMS株式会社
李 在秀
2010年は例年より韓国にとっては多事多難であった。G20の開催、韓米FTA/韓欧FTA妥結、北朝鮮からの砲撃などの大きなトピック、事件が挙げられる。そのような状況の中で、韓国印刷業界は「構造調整を通じて印刷会社の数を減らすことだけが印刷産業が生き残る道」ということが話題になるほど厳しい年でもあった。毎年、年頭はいつも期待感と不安感が交差するように、2011年も対内外的に流動性の要素が大きい年で、安定的な経営を脅かす一年になりそうである。
◆韓国経済
2010年の韓国の経済成長率は第1四半期が8.1%、第2四半期が7.2%と高い成長であった。第3四半期は4.4%、第4四半期は4.3%で、年間成長率は5.9%と推定されている。これは中国など新興市場の高い経済成長に伴う輸出の好調が背景にあったが、今年は5%程度の成長を予測しているが、成長率の鈍化でその達成は楽観できない状況にある。
◆印刷及び印刷関連業界
印刷業界は典型的な内需産業で、高い経済成長にもかかわらず不況が続いている。中でも印刷の大きな顧客である出版業界は、主要読書層である若い世代の読書量の減少と大型オンライン書店の割引販売による町書店の減少、電子書籍などの影響で出版市場の縮小を招く結果になった。その一方で印刷物の輸出は好調で、史上最高となる20%の伸び率(2009年対比)で3億2000万ドルを超えるものと見込まれており、今年は更に増えると予測されている。
内需部門での成長動力が弱くなりつつあり、印刷産業をめぐる過多競争、低い受注価格、従来の印刷部門の減少などは短期間内に改善される見込みがないので、輸出奨励が現実的な代案になりそうである。
デジタル印刷機は堅調な増加傾向を維持しており、今年も増加傾向が続くものと期待されている。業者間の競争が激しくなってはいるものの、全体的な市場規模が大きくなり新規需要が引き続き増えており、数台の印刷機を持つ中堅印刷社のオフセット補完策と作業ラインの合理化策で導入傾向が強い。さらに小規模印刷会社は、オフセット印刷機の完全代替に注視しながら導入の検討をしているといった様子が今年も続きそうである。
各印刷団体では2010年から政府支援を核心とする「印刷文化産業5カ年振興計画」の法律提案を用意しており、この法律を成立させることにより良い印刷環境作りに努力している。この5カ年計画の内容には、「中長期印刷文化産業発展のための法律改定」「世界印刷博物館の建築」「21世紀情報化時代に相応しい世界印刷大百科発刊」「印刷業界の経営安定及び施設現代化のための印刷振興財団設立」「輸出増大のための印刷物輸出支援センター設立」「ソウル市内の印刷振興地区及び印刷産業団地の助成」などがある。
新聞の報道記事によると、3年先である2013年には韓国の紙文書の半分がなくなると予測されている。一方、知識経済部の新環境経済活性化のための電子文書拡散方案計画では、各種文書の電子文書代替率を2015年まで拡大して紙生産と物流費用を減少してプロセス改善を通じてCO2排出量を減らす構えである。
従って、2011年のオフセット印刷機市場は販売回復のため各社とも努力するだろうが満足な成果を上げるまでは簡単ではなさそうだ。印刷物の発注量が増加する可能性が低く、デジタル印刷機へ移る需要が少なくはないと思われる。
各社とも単純販売方式から脱皮して、顧客へ実質的に受益を与えるソフトとパッケージ化された提案、またはCMS支援など色々な妥結策が見込まれる。しかし金融機関の金利の引き上げが次々と現実化されているので、設備購入の資金支援が円滑にならないと予測されるので、新規需要創出への道は多少時間がかかりそうだ。また、韓国の印刷関連主要行事として2年ごとに開催されている「韓国国際印刷産業展(KIPES)」が、今年から毎年開かれることになったので、韓国の印刷関連産業がどれほど回復されたのかを比較できる物差しになるだろう。
(※参考資料 統計庁資料)
(『JAGAT info』2011年2月号)