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InDesignで実現する美しい文字組み
●写植からDTPへ
手作業で版下を作っていた頃は、印刷までの各工程にそれぞれ専門の作業者がおり、長年の経験によって高品質な製品を作ってきた。文字組みであれば、写植オペレーターがデザイナーの指示をもとに、文字を美しく組んでくれていたはずだ。その後、パソコンを使っての制作に移行していくことに伴い、これまで専門の作業者が行っていた工程をデザイナーが担うことになっていった。いわゆるDTP化だ。文字組みもアプリケーションを使って行うため、デザイナーが行うことになり、ちょっと「???」と首をかしげたくなるような文字組みの印刷物があふれたのは記憶に新しい。もちろんアプリケーション側の問題やフォントの種類が少なかったことも原因のひとつだが、文字組みをきちんと勉強せずにアプリケーションの設定そのままで組んだことも大きな要因といえる。そして、時代と共にアプリケーションも進化していき、DTP化への移行当初のような低品質の文字組みは減った。
●美しく”組む”ためのスキル
とは言っても、写植時代の品質に戻ったとは言い難い印刷物もまだまだ多いのも事実。いくらアプリケーションが進化したかと言っても、思い通りに組むにはそれなりのスキルが必要だからだ。今回は、InDesignに搭載された文字を美しく“組む”ためのさまざまな機能を紹介していきたい。QuarkXPressやIllustratorでは、手間のかかっていた文字の調整も、InDesignではかなり高度にコントロールできる。それなりのスキルは必要となってくるが、ぜひ色々と試して実行してほしい。
●文字組みに影響を与えるさまざまな機能
InDesignの文字組みというと、『文字組みアキ量設定』が注目されがちだが、実は文字組みに影響を与える機能は色々とある。『禁則処理設定』はもちろん、『ぶら下がり方法』や『禁則調整方式』、『コンポーザー』等があり、これらそれぞれの機能がどのように設定されているかも、大きく影響しているのだ。まず、これらの機能がそれぞれ文字組みにどのような影響を与えるかを理解した上で、『文字組みアキ量設定』を設定していくとよい。
では、それぞれの機能を見ていこう。まず、『禁則処理』と『ぶら下がり方法』。これらは、とくに悩むことなく設定できるはずだ。ハウスルールに沿って設定してほしい。ただし、ぶら下がりをする際には、「標準」と「強制」の2種類があるので注意しよう。行末の句読点を強制的にぶら下げたい場合は「強制」、収まる場合にはぶら下げ処理しないのが「標準」だ。
意外に知られていないのが『禁則調整方式』だ。設定は4つあり、禁則処理によって文字を追い込むのか追い出すのかを設定する。どの設定を選択しているかで文字組みも変わるので、好みに応じて設定して欲しい。デフォルトでは「追い込み優先」が指定されているが、筆者は「調整量を優先」をよく使用している。
そして最後に『コンポーザー』だ。日本語用のコンポーザーは2つあり、デフォルトでは<Adobe日本語段落コンポーザー>が選択されている。段落単位で文字間のばらつきが少なくなるよう調整してくれる設定だが、修正した個所よりも前の行の改行位置が変わるケースもあるため、印刷会社によっては使用を禁止している会社もある。筆者の場合、動作を理解したうえで使用している仕事もあるが、一般的には<Adobe日本語単数行コンポーザー>を選択しておくとよいだろう。
●「文字組みアキ量設定」とは