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企業経営全般に関わる7つのキーワードとして、事業再生の実務家 越純一郎氏は「経営力、営業力、生存力、戦闘力、現場人材、リーダーシップ、夢の共有」を挙げている。【JAGAT大会・特集2】
『事業再生要諦 志と経営力-日本再生の十年に向けて』は、産業再生機構が発足した2003年に発刊された。著者の越純一郎氏は、日本の再生に必要なものは「志」と「経営力」であることを、単なるキレイゴトではなく、金融の現場と企業再生(経営)の現場の両方を経験した立場から強く訴えている。
日本興業銀行で22年間、M&Aや証券化などを担当した越氏は、2000年に興銀を退職して秋田県の企業グループの再建に着手し、5件のM&Aや販売の全国展開などを通じて、概ね3年で再建を完了した。「個人保証までさせられて、よく再建案件に飛び込む決心をしましたね」とよく言われたというが、この間の経緯は週刊ダイヤモンドなどに紹介されて、経済小説『ハゲタカ』の芝野健夫のモデルとしても知られることになった。
『事業再生要諦』は、企業再生・再建の実務家(経営者、金融機関、弁護士)を読者に想定しているが、「むしろ経営者以外の方々にこそ読んでほしい」という思いから、特に予備知識や経験がなくても理解できるようにまとめられている。そのために、優秀な経営者の言葉や、自身の経験や学んだ事実を豊富に紹介している。
企業再建には「外科手術型(スクラップ型=過剰債務のスクラップ)」と、「内科治療型(ビルド型=収益力のビルド・アップ)」があるが、本業不振型・事業不振型の不良債権では、内科治療が重要になる。
内科治療とは、企業の生存力を確保し、それを維持・向上させていく活動で、経営全般に関わる問題になる。そこで重要なキーワードとして、「経営力、営業力、生存力、戦闘力、現場人材、リーダーシップ、夢の共有」の7つを挙げている。
さらに、経営者の「必須科目」として、最も重要なものは「覚悟」であり、次いで「経営理念、リーダーシップ、セールス&マーケティング、ブランディング、人心の掌握、企画、資本政策、M&A、代理店政策、市場調査、フランチャイズ展開、管理会計、技術開発戦略、設備投資計画、海外提携、法務、経理、税務、原価計算、採用、人事管理、労務、総務、広報とIR、リスク管理、上場戦略、特許・知財戦略、ストックオプション、財務管理、コーポレートファイナンスなど」、多岐にわたる知識と能力を挙げている。つまり、経営者たる者に対して、現実は「スーパーマン」であることを求めているのだ。
「志あるところに道は拓ける」という言葉で越氏は「あとがき」を締めくくっているが、その前の文章は今の日本に通じる呼びかけでもある。
「九〇年代の日本が直面したのは経済敗戦という第二の敗戦であり、多くの日本人が辛酸を嘗め、元気をなくした。このままで済ませてなるものかという思いを抱く者は筆者だけではないだろう。失われた十年などと言っているのではなく、日本再生の十年を開始することが現在に生きる我々の課題である。これは時代が我々に与えた任務である。時代は我々に対して「お前たちが立ち上がれ」というメッセージを送っている。我々は時代の声を聞かねばならない。戦後の何もないところから、名もない人々の努力と志ある事業家によって日本再建がなされたように、現在、我々が自分の足で立ち上がることは、時代が我等に与えた使命である。」
前回は越純一郎氏とドラマ「ハゲタカ」の関係から見えてくる普遍的なテーマを考察しました。
「売り上げなくして経営なし 今こそ「経営力」が求められている 」
■関連イベント
「JAGAT大会2011 印刷新創業宣言~高い志と本物の勇気」
2011年06月15日(水)東京コンファレンスセンター・品川
特別講演には事業再生ビジネスの第一人者 越純一郎氏を招聘!
「マーケティング」「クロスメディア」2つのテーマについて分科会を開催し、ディスカッションしていきます。