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印刷物制作を通じて地域に根づいてきた印刷会社。印刷会社が実際に取り組んでいる地域活性にはどのようなやり方・アイデアがあるのだろうか。
産学官連携によるフリーマガジンの発行、動画を活用した海外観光客の誘客、地域通貨の導入と運営、ご当地キャラクターの創造、地域のブランディング。印刷物制作を通して培ったメディア制作のノウハウとネットワークは、地域活性の担い手が持つべき能力そのものだ。地域情報の集積・発信拠点として印刷会社にできる地域活性の事例を示す。
■1.産学官連携
学校、官公庁や自治体、民間企業と連携して地域社会や地域経済の発展を目指す取り組みだ。この場合、印刷会社は産学官のコーディネート役を期待されることが多い。地域の商店街を活性させるため、官公庁や自治体が後援・助成、学生が取材や記事の執筆を担当し、商店街が広告掲載料を支払い、印刷会社が全体をコーディネートして商店街活性化フリーマガジンなどを編集・制作するようなモデルがある。
■2.観光客誘客
地域の魅力を地域外に訴求し、観光客や住民を呼び込もうとする取り組みである。地域で作ったフリーマガジンを地域外で配布する、動画を作って地域外に発信するという事例がある。例えば、自治体の依頼を受け、大学と中国人留学生の協力を得て、中国本土に向けた中国語番組を制作してインターネット上で放映するような例がある。USTREAMやTwitterなどのソーシャルメディアを活用すればコストを抑えることができる。こうした取組みは印刷物制作を通じて情報加工に慣れている印刷会社にとって、意外にハードルは低いという。
■3.地域通貨
地域通貨は法定通貨ではないが、ある目的や地域のコミュニティー等で、法定貨幣と同等の価値あるいは全く異なる価値があるとして発行・使用される貨幣である。ただし明確な定義があるわけではない(ウィキペディア)。たとえば早稲田・高田馬場発祥の“アトム通貨”は2011年4月時点で8支部に広がった取組みだ。貨幣単位は「馬力」で、通貨は「10馬力」、「50馬力」、「100馬力」の3種類があり、加盟店で利用できる。「環境」「地域」「国際」「教育」に貢献するイベントやプロジェクトへの参加で入手可能だ。
■4.ご当地キャラクターの創造
地域の魅力や特徴を盛り込んだマスコットキャラクターをつくり、地域の象徴の一つに位置づける取り組みだ。誕生させたマスコットキャラクターを活躍させ、地域の魅力を近隣都市や観光客に印象づける役割を持たせるとともに、キャラクタービジネスの可能性も期待できる。近年は着ぐるみ化された“ゆるキャラ”の人気が高まり、メディアで取り上げられる機会も増えている。印刷会社は従来より地域の印刷物制作を通して地域を熟知するため、地域の魅力のイメージ化に慣れている。
■5.地域のブランディング
地域の様々な魅力を一つのブランドに集約して表現し、特定の地域一帯の知名度やイメージを高める取り組みだ。一つのブランドへの集約過程では、地域の魅力の発掘や再発見、再評価が必要になる。近年、印刷会社の多くは印刷メディアだけに留まらない多メディア対応が可能になりつつあり、ブランドを様々なメディアで展開する情報発信まで担えることが強みになっているケースが多い。地域の印刷物ニーズが常に集積されて地域情報が豊富なこと、地域内に持つネットワークを背景に、印刷会社のデザインスキルを組み合わせて取り組むケースが多い。
■関連セミナー 「印刷会社の地域活性ビジネス2011」
本セミナーでは、上記5事例に加え、基調講演まで聴くことができます。
2011年5月27日(金)13:30-17:40
基調講演「メディアの地域活性 その手法と思想」、ほか5社の事例から
(JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 藤井建人)