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企業の生き残りは、クライアントから生き残ってほしいと思える企業になること。そのためにはクライアントの成果につながる印刷物を届けることが肝要である。【JAGAT大会・特集3】
■マーケティングとは販売を不要にすること
マネジメントの巨人、ドラッカーの名前は知っていても実際に読んだことのない人は多いかもしれない。生誕100年の2009年に『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(『もしドラ』)が発刊され、ドラッカーが改めて注目されるきっかけともなった。マネジメントに関して世界で一番読まれた本と勧められて、中身も確認しないで買った主人公は、マネジャーの資質とは「真摯さである」という一文に突き当たる。「真摯さ」とは何かを自問して涙で読み進めなくなる主人公の真摯さが、事あるごとに『マネジメント』をひもとく設定を無理のないものにしている。
顧客を満足させることこそ、企業の使命であり目的である。(ドラッカー『マネジメント エッセンシャル版』23P)
企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。(同16P)
これまでのマーケティングは、販売に関係する全機能の遂行を意味するにすぎなかった。それではまだ販売である。われわれの製品からスタートしている。われわれの市場を探している。これに対し真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。(同17P)
『もしドラ』には引用されていないが、マーケティングに関しては次の一節も重要である。
実のところ、販売とマーケティングは逆である。同じ意味ではないことはもちろん、補い合う部分さえない。もちろんなんらかの販売は必要である。だがマーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせて、おのずから売れるようにすることである。(同17P)
■クライアントが生き残ってほしいと思える企業になること
電通総研 四元正弘氏は、印刷・メディア産業のマーケティング戦略を考える場合にドラッカーはやはりヒントになるとして、「ドラッカーは、マーケティングとイノベーションの2つを言っている。マーケティングとは言わば売れる仕組みだ」。さらにメディアの多様化で印刷会社が生き残れるかどうかは、顧客にとっては関係のないことで、「重要なことは消費者が生き残ってほしいと思える企業になること」と、顧客視点の重要性を強調している。
イズ・アソシエイツ 岩本俊幸氏の「最終的に広告を打たせない広告屋をモットーとしている」という言葉も顧客視点によるものだ。
パンフレットを納品して「きれいにできたね」と言われて満足していた岩本氏は、その飲食店が閑散としていて、パンフレットも活用されていないことに気付いて、これがお客に喜ばれる仕事だろうかと虚しくなった。そこで一念発起して「規模の小さな会社に、効率のよい適正な費用の販促手段を提供することで、その成果を共に喜び合いたいという仕事観の根本」が確立された。
「JAGAT大会2011」マーケティング分科会「変革時代のマーケティング戦略」では、印刷・メディア産業において圧倒的に勝ち残るために必要なマーケティング戦略、売れない時代にモノを売る手法、顧客視点に立つことなどをディスカッションを通して考えていきます。
電通総研 四元正弘氏をモデレーターに、スピーカーのイズ・アソシエイツ 岩本俊幸氏とシー・レップ 北田浩之氏の3人で、事例を交えてディスカッションします。
次回は『JAGATinfo』誌掲載の北田浩之氏のインタビューを紹介します。
「より効果的なプロモーションで顧客のビジネスを加速 」
■関連イベント
「JAGAT大会2011 印刷新創業宣言~高い志と本物の勇気」
2011年06月15日(水)東京コンファレンスセンター・品川
特別講演には事業再生ビジネスの第一人者 越純一郎氏を招聘!
マーケティング分科会「変革時代のマーケティング戦略」とクロスメディア分科会「情報爆発化時代のクロスメディア戦略」での活発なディスカションにご期待ください。