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以前から「ワンソースマルチユース」という言葉もあるように、印刷用に作成したDTPデータを様々なメディアで使用しようという試みは、ずいぶん昔からおこなわれている。
トライした方法の中でもっとも一般的なものはPDFで、フォントをエンベッドしておけばこれだけでもかなり本格的なマルチユースが実践できるようになった。つまりマルチユースしようと思ってもフォントの問題は非常にやっかいなことだったのである。
写真の解像度の問題も、スキャナ時代ではスキャナ側の倍率変更で最適化していたため「DTPソフトで倍率を変更したりすると画質が損なわれる」と怒られたものである。
カラーリバーサルフィルムのようにアナログデータが介在すると画質がリセットされ、開発途上のワークフローでは良いことの方が多かったのだ。テレビの画面を新聞紙面に活用するシステムが開発されたとき、ダイレクトにデジタル画像データにするより、一旦カラー印画紙に出力した方が最終的な画質が良かったというのを思い出す(私は失敗した側にいた)。銀粒子が画素数の少なさを上手く補間するというものだった。
同じことがAudioの世界でもある。iPod用のスピーカーでは、デジタルでデータを入力するよりもアナログに直した方が何かとトラブルが少なく、有名なiPod用スピーカーでもアナログ接続のものが多いのが現実である。
しかし、技術の進歩とともにデジタルの方が音も画質も良くなるのは当たり前で、気がつくと何から何までデジタルで処理するようになってしまった。
現在はデジカメの決まった画素数から様々な倍率の画像に変換する際でも、変倍のアルゴリズムも昔とは比べようもないし、一画素自体のデータの信頼性も昔とは比べようもない。
かつてはワンソースマルチユースのデータ論議で、PDFが良いのか?XMLが良いのか??まじめに論議されていたが、本当にデータがマルチユースされるとしたら議論の余地はない。データの再利用を考えると、データをプレーンなまま残しているXMLの方が便利に決まっている。
さすがに、電子書籍時代になって「本当のマルチユースならXMLだ」ということは浸透してきたが、新聞や雑誌を閲覧するだけならPDFも数多く使われている。これをとやかく言っても始まらないし、便利なように使用すれば良いのである。
しかし、マルチユースするための本命はXMLであり、その派生でもあるEPUBはもともとそのような氏素性を持ったものである。EPUBを単なる電子書籍のページ記述言語として使っては勿体ないのであり、マルチユースを本格的に考える時代の始まりとも言えるのだ。
(文責:研究調査部 郡司秀明)