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JAGAT大会クロスメディア分科会では、メディアが多様化している状況において、DAM、コンテンツマネジメント、デジタル雑誌など、印刷会社はどのような戦略をとるべきか考える。【JAGAT大会・特集6】
■情報爆発化時代って何だろう
印刷業界は制作物のデジタル化に早くから取り組んでいた。しかし、ITが進化していく過程でDTPの付加価値が下がり、売り上げ減少の要因になっていった。専業としての事業領域が狭くなったことになるが、見方を変えると業際や業界の枠組みがなくなり、それまで隣接していた産業のビジネスを掴まえるチャンスが出てきたということだ。
印刷業界は、過去にデジタル化を乗り切ったというアドバンテージがあり、新たな市場を開発していくべきであろう。その解決の手法がクロスメディアであるといってよい。
しかし、印刷は受注産業であるという構造的な問題から、どうしても顧客視点に立って物事を考えることが苦手であるようだ。これまでのQDCのビジネススタイルはだんだん通用しなくなってくる。顧客が届けたい情報をあらゆる媒体を利用して、適切な形でエンドユーザーに届ける、その仕組みを考えることが自社の強みになってくる。つまり本来の意味での情報メディア産業の担い手になることである。
またソーシャルメディアの普及で、情報を自ら発信することが容易になり、「誰でもメディア」の時代になっている。個人レベルの噂話や口コミが「情報」として爆発的に増えることで、本当に必要なものを取捨選択するスキルも養うべきである。生活者のスタイルが変化し、それとともにマーケットが変化して、企業のアプローチも戦略的にならざるを得ない。もちろん印刷会社にもその視点が要求される。
■クロスメディアの戦略を模索する
クォンタムアイディ前田邦宏氏は、「見えないつながりを可視化する」ことに注目し、自分の関心から他者の共感を得て、新しい情報や人とのつながり、新たな関心をはぐくむ「循環の場」を提供する関心空間を2001年に立ち上げた。
現在は「ソーシャルメディアの10年先を考えると、ソーシャルグラフを価値に転換できるのかが課題。新しいメディアビジネスに信頼基盤という概念を作りたい」と話している。具体的には、「課題提示型から課題解決型メディアへ」「恊働による知識基盤プラットフォームと出版の将来」などをもっと分かりやすくできたらと思っているという。
「コミュニケーション デザイン」の領域やその情報伝達の技術に着目しているSEデザインの篠崎氏は、印刷・出版・広告にフォーカスし、印刷が企画などの川上に進出したときにコンテンツのデジタル化でビジネスが拡がる可能性があるという。
そのために必要な「標準化」「データベース構築」など、そして情報を切り出すには「編集」の機能が重要になってくる。DAM(デジタル・アセッツ・マネジメント)を活用した、配信ビジネスのアウトプットの一つのメディア形態として印刷がある。
具体的な仕組みや事例を紹介し、それをベースに印刷会社ができることのヒントを考えていきたい。
コンデナスト・デジタルの田端信太郎氏は、リクルートで『R25』を立ち上げた時に、印刷会社とのやり取りや工場見学で印刷を身近に感じた経験を持つ。現在はVOGUEやGQ、WIRED日本語版などのネットビジネスや、iPad向けデジタルマガジンのデジタル事例に関わっており、Web戦略についても詳しい。
しかし、「広告の手法も含めて、はたしてデジタルがすべていいのかどうか疑問だ」とも語る。「例えばリアルな雑誌の編集長とネットマガジンの編集長では格が違うし、ブロガーのステータスは、自分の本を出版していることである。実は、紙の付加価値はIT系の人のほうが理解しているのではないか」という興味深い話もされている。
「JAGAT大会2011」クロスメディア分科会「情報爆発化時代のクロスメディア戦略」では、ソーシャル時代における印刷・出版メディアの行方、Webサービスの活用事例からビジネス開発まで、ディスカッションを通して考えていきます。
■関連イベント
「JAGAT大会2011 印刷新創業宣言~高い志と本物の勇気 」
2011年06月15日(水)東京コンファレンスセンター・品川
特別講演には事業再生ビジネスの第一人者 越純一郎氏を招聘!
マーケティング分科会「変革時代のマーケティング戦略」とクロスメディア分科会「情報爆発化時代のクロスメディア戦略」での活発なディスカションにご期待ください。