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“エル・ゴラッソ ”は、2004年に創刊されたサッカー専門新聞だ。この20年で創刊された新聞としては稀有の成功例として「最後の新聞 」とも呼ばれる。サイズはタブロイド版だが、用紙の色がピンクなので、キヨスクやコンビニで探せばすぐわかる。発行20万部に成長した同紙は、従来の新聞の常識の多くを打破してきた。
紙に色をつけた新聞は初めてだろう。これだけのことでも、従来の新聞ではありそうでなかったことだ。読者にとっては選びやすいし、それでいて読みにくさを感じることはまったくない。選手の肌の色も人種を問わず生き生きとカラーで紙面上に表現され、インターネットで伝えられない質感を実現した。
情報過多の時代、読者は新聞などの印刷メディアに何を求めているのだろう。同紙は正確性よりエンターテイメント性を重視、その試合を象徴する写真を的確に選んでダイナミックに配し、簡潔な記事を添え、両チームのフォーメーション表で試合の模様をグラフィックに再現、試合の息吹を伝えている。
JクラブはJ1が18、J2が20の計38チームに増えている。これだけのチーム数は日刊スポーツ紙でもサッカー専門週刊誌でも取材しきれない。しかし“エル・ゴラッソ”は全クラブの取材を網羅するシステムを考え、日刊紙と週刊誌の中間的な週3回刊で伝え、サッカーファンの心を掴む事に成功した。
Jリーグはインターネットの立ち上がりとほぼ同時期に創設された。それから20年弱、国内サッカーとメディアを巡る環境はかつてないほどの変化を見た。こうした変化の途上では、印刷業界でも組版及び製版がDTPに移行するなど、いくつもの技術革新を経た。
“エル・ゴラッソ“は、1993年以降のマクロ環境激変で生まれた隙間にチャンスを見つけて生まれたのである。従来の新聞にない大胆な紙面は、DTPによるレイアウトが可能にした。こうした変化を的確に分析した創業者・山田泰氏の戦略的マーケティングは、印刷会社がニッチビジネスを考える上で大いに参考になるだろう。
開催日時:2011年6月29日(水)14:00-16:00
【構成】
14:00-15:00 新聞業界の最新動向
15:00-16:00 “エル・ゴラッソ“に見る新聞メディアの可能性