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地方自治体の広報紙制作のDTP化が進展したのは、2000年頃からだった。
■自治体広報紙制作の変遷
今から10年ほど前、2000年頃から全国の地方自治体では、広報紙制作のDTP化(自治体内部で制作業務をおこなう内製化を伴うケースが多い)が進展した。
DTP制作への移行の理由はさまざまだが、DTP環境が安価になり導入しやすくなったこと、外注費などコスト削減、作業時間短縮などだろう。DTPであればPCとソフトウェア・フォント・プリンタなどを導入し、若干のトレーニングをおこなうことで一般の自治体職員でもオペレーションが可能である。
また、この時期はデジタルカメラの普及が始まった頃でもあった。デジタルカメラで撮影すれば、写真の掲載も容易である。
つまり、専門業者に100%依存しなくとも広報紙を制作できるようになったのである。
広報紙制作のDTP化や内製化の最大のメリットは、情報発信のスピード化であったと言える。それ以前であれば、印刷会社との校正・修正のやりとりで数日かかるのが一般的だったが、締め切り直前の最新情報を掲載することもできるようになった。
また、DTP制作に伴ってPDF配信もおこなわれるようになった。手元に広報紙がなくとも閲覧することができる。また、バックナンバーとして過去の広報紙を参照することも特別なコストをかけずに実現した。
住民や読者から見ると、PCさえあれば容易に広報紙を閲覧することができると言える。
■広報紙とEPUB版電子書籍
昨年より電子書籍に注目が集まっている。iPadに代表されるタブレットPCやiPhoneなどのスマートフォンが普及しつつあり、時間や場所の制約なしに持ち歩いて閲覧できる電子書籍が求められている。
画面サイズの大きなPCであればPDFの閲覧でも問題はないが、タブレットPCやスマートフォンでは、文字サイズを自在に設定できるリフロー型の電子書籍が適していると言える。さらに、電子書籍のメリットとして関連サイトや動画とリンクすることも容易である。
無料配布の自治体広報紙が低コストでEPUB配信できるのであれば、急速に広がっていくことが想定される。
しかし、現時点で印刷物とEPUBなどの電子書籍の両方を効率的に制作できる仕組みは、ほとんどない。ページ単位レイアウトを基本とする印刷物と最初にドキュメント構造ありきの電子書籍では、相容れることは困難である。
制作段階の途中で手作業が介在すると、結局は校正やチェックの手間が増えてしまい、コスト増加や配信スピードに影響してしまう。
タブレットPCやスマートフォンが今後も普及していくことは疑いない。
新聞や雑誌・書籍の電子書籍化も急速に拡大していくだろう。自治体広報紙に限らずさまざまな印刷物が、印刷とEPUBの両方で配布、配信することが広がっていくと考えられる。
今後、印刷物とEPUBデータの両方を効率的に制作する仕組みを実現するには、DTPデータありきだけでなく、場合によってはワークフローの再構築も必要となるのではないだろうか。
7/12(火)【印刷とEPUB、ハイブリッド出版の進展と課題】
<EPUB版広報誌の制作・発行と課題>