本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2010年度「JAGAT印刷産業経営動向調査」の調査結果がまとまった。今回の調査期間は3月11日の東日本大震災をまたぐ形になり、調査の実施・継続自体が危ぶまれた。
しかし、回答企業のご協力、叱咤激励のおかげで、今回も例年通り結果報告をまとめることができた。この場を借りて回答企業の皆様に厚く感謝申し上げたい。
■業績 3年連続の減収減益
2010年JAGAT会員企業の業績は3年連続の減収減益だった。売上高は2年連続の5%減、営業利益率は2年連続の1%台と、リーマン・ショックの影響が強く反映された2009年以降、特に業績が厳しい。
更にこの2年は外注費比率の上昇が加わり、収益性を低下させる要因となっている。戦略アンケートの結果をみると、これまで長期的に続いてきた外注の内製化で利益取り込みをする余地が少なくなり、外注費以外にコスト削減の余地を求める動きが始まっている。
中長期的な構造問題として、平均年齢の上昇、収入に占める人件費比率の上昇、販売管理費に代表される間接費比率の上昇も続いている。逆に言えば、こうした問題にうまく対応できている会社の業績は良いということだ。
■戦略 短期的な利益重視姿勢強まる
景気後退に入った2008年から3年連続で総合化よりも専門化を選ぶ会社の業績が優位になっている。売上高対策では、製品の差別化を志向する会社の業績が5年連続で平均を上回って良好だ。
コストの削減策では、2010年は人件費の節減、資材料の単価交渉といった直接的な即効性ある経費削減を重視した会社の業績が良かった。
最も重視する営業ターゲットでは、既存商圏や既存顧客の拡大や深耕を重視する会社の業績が相対的に良かった。2010年は、新規商圏への進出のような積極先より、従来市場を守るような動きの方が良かったようだ。積極策より守りを選べば短期的な業績にはプラスかもしれないが、中長期的な成長性の模索には課題を残している。
■投資 人材・UV・電子出版・デジタル印刷を重視
設備投資を減らすと回答した会社は2年連続で減り、設備投資意欲は行き過ぎた抑制からは脱しつつある。ただし今回調査期間中に東日本大震災があったため、震災後は再び投資に慎重なスタンスが増えた可能性は高い。
強化したい生産工程の最多はWeb制作(53%)、次が電子出版(42%)、印刷(38%)の順となっている。Web制作を挙げる会社は例年最多だ。また、今回調査で初めて選択肢に加えた電子出版は、4割を超える印刷会社が関心を示している。
今後3年以内の投資において最重視する分野は人材(20%)が最多、印刷(16%)、クロスメディア的なIT(14%)と続く。電子出版を最重視するのは4%しかなく、現時点で強化の意向は強いが、最重視ではないという位置付けである。
■設備 デジタル印刷機の平均保有台数が過去最高
設備はハードからソフトへの流れが2010年度も続いた。輪転機の導入意欲は昨年に続いて低い一方、枚葉機ではUV印刷機の導入意欲が高く、今後の更新需要を牽引しそうだ。今後取得する予定の枚葉印刷機のうちUV機能付きが54%を占めている。
デジタル印刷機への関心の高い状況が続き、不況の中でもデジタル印刷機の普及が確実に進んでいる。1社当りデジタル印刷機保有台数は調査開始以来、最高の1.25台となった。
満足度の高い設備はCTPとワークフローRIPが、例年通り上位にランクインしている。
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