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印刷現場では顧客ニーズや入稿データに対応する際、印刷が困難な場合があり対処には注意が必要である。
顧客からの入稿データを製版しCTP出力した時、印刷現場において品質面で印刷が難しいケースがある。例えば、細かい文字の抜き合わせや4色総ベタで重なっているデータなどが挙げられる。また、顧客が特色の重ね刷りで希望色を要求したり、印刷物そのものを原稿として入稿することもある。
■小さい文字とトータルインキ量
文字(特に明朝系)の大きさが5ポイント以下で抜き合わせになっているデータの見当合わせは、印刷オペレーターにとって難しい。見当が少しでもずれると、その部分が指定色と異なった色になってしまう。このような場合、プリプレス側で文字のエッジがしっかりでるような処理をして対応する。
また、顧客から4色ベタで指示されたデータを渡されることもある。この時のトータルインキ量は400%になる。この場合、トラッピングの原因になるのであらかじめトータルインキ量を減らしたデータを作成しなければならない。UVインキの乾燥時間は短いが、油性インキは長いのでトータルインキ量には留意しなければならない。
■難しい特色の重ね刷り
顧客から特色同士を重ねる要求や、古い印刷物サンプルに色を合わせる要求があると、印刷現場としても対応が難しい。更に刷り順の指定もないことが多い。
印刷現場ではCMYKそれぞれのベタ濃度を決め色のコントロールをしている。しかし、特色のベタ濃度は決められていないので、より厳密な色の管理はLabで行わなければならない。特色もインキの盛り加減により発色が変わるので、できるだけ顧客からLabの指示を受け、⊿Eの範囲も決めておくのが望ましい。
また、カラーチップの濃度の違いによるトラブルも発生することがある。同じカラーチップでも顧客と印刷会社が所有しているものの色が違っていることが多々ある。厳しい色再現が求められる仕事の場合、営業は互いのチップの確認、更にLab値のやり取りを行わなければならない。
印刷はウェットトラッピングのため、先刷りのインキが後刷りのインキを完全に透過して発色することはできない。顧客と印刷会社が互いにカラーマッチングしているデバイスで色を確認できれば問題は少なくなる。しかし、そのような環境にない場合、顧客はモニターと印刷物の色に若干の違いがあることを踏まえてデータを作成することが望ましい。
■印刷物を原稿にするときのモアレ対策
顧客が印刷済みのパンフレットやポスターを原稿として入稿することもある。この場合、その印刷物はスキャナーで取り込むことになる。印刷物であるパンフレットやポスターをスキャニングすると入力したデータにはモアレが発生することがあるので、これを除去しなければならない。
モアレを防止するには、スキャナでー取り込む際にモアレ除去機能を使用するか、Photoshop上で画像処理をするが、画像の劣化は否めない。顧客に合意をとりつつ極力モアレを抑え、かつ、より原稿に色を近づける入力処理をしなければならない。
印刷物を原稿とする仕事の場合、写真原稿に比べてモアレの発生などの画質劣化が起こることを顧客に認識してもらう必要があるだろう。