本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
自社で設備を持つべきか、外部のネットワークを活用すべきか。企業には設備投資が欠かせない以上、設備投資の可否は企業にとって永遠の課題の一つである。設備投資をすれば内製化比率は高まり利益率は改善するが、資金は設備に固定されてしまう。すべきときはいつで、控えるべきときはいつか。
セオリーとしては、将来にわたる当該案件のキャッシュフローを予測し、現在価値に割り引いて初期投資額との差し引きがプラスになるかどうかを判断する。つまり、持つ場合のキャッシュフローと持たない場合のキャッシュフローを比較し、どちらが有利かを評価する。いわゆるDCF法による正味現在価値を使うことが望ましい。
しかしそもそも、将来に渡る正確な受注予測は可能なのだろうか? 価格はどのように変化するか? 競合他社が同じ設備を入れて需給バランスが崩れる可能性は? 技術革新が起きて購入設備が陳腐化する懸念は? 将来のことは誰にもわからないうえに高額案件が多いから、誰にとっても設備投資は難しい。
不確実性が高いからこそ、できるだけ客観的な数字を積み上げ、できるだけ正確な材料を集め、できるだけロジカルに考え、少しでも不確実性を減らして投資判断の精度を高めなければならない。現在、うまくいっている印刷会社は、過去からこうした投資判断において打率の高い会社である。
投資判断のうまいある印刷会社の経営者は、あれこれ述べたうえで「結局は運ですよ」と言った。しかし見ていると、運だけではない。正しく慎重に考えたところに無意識に過去の経験や勘、先代からの教え、周囲の助言などが加わって結果的に正解を導いている。要は運の要素をできるだけ排除する体制を作ることなのだ。
各社の決算短信によると、上場印刷会社22社の2010年度有形固定資産取得支出は前期比21%減の1678億円だった。一方、「JAGAT印刷産業経営動向調査2011 」によると、中小・中堅印刷会社では「設備投資を減らす」と答えた会社が2年連続で減少した。こうした情報をも含めてどう考えるかである。
(JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 藤井建人)
■関連セミナー 【東京・大阪開催】
最新調査結果にみる印刷経営の現在と戦略
2011年9月28日(東京)、30日(大阪)
■関連ページ JAGAT BOOK STORE
【印刷産業経営力調査の概要】
概要:印刷会社120社から調査票を回収
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2011年2月~3月
「JAGAT印刷産業経営動向調査2011」
体裁:A4版、104ページ
定価10,000円(税込)、JAGAT会員特別価格5,000円(税込)
発行:社団法人日本印刷技術協会 研究調査部
購入:申込書 に必要事項を記入してFAX送信ください。
【構成】
1.2010年度の印刷会社の経営動向
(1)経営動向の概況
・環境変化に揺れない印刷会社経営を考える
・印刷市場と印刷経営の考察
(2)経営動向指標
・貸借対照表、損益計算書
・生産性、収益性、安全性、人員構成等
・1人当り指標(売上高、加工高、人件費、機械装置額等)
2.印刷会社の業績と経営戦略
(1)業績と経営戦略の概況
・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
・業績良好な印刷会社の戦略
(2)経営戦略
・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
3.印刷会社の設備動向
(1)設備動向の概況
・次年度の設備投資予定
・設備投資の傾向
・印刷機の保有、導入・廃棄意向、満足度
(2)設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
・製版・刷版
・印刷機付帯設備
・製本・後加工
(3)DTP環境
・PCの種類と台数
・アプリケーションの種類とバージョン
・データの入稿形態
4.参考データ
(1)セグメント別の経営指標
・データ:損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
・セグメント:2地域別(東京とその他地域)、従業員規模6段階別、業種業態6分類別、オフ輪の有無別)
(2)月次の各種前年比推移