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紙の教科書を全部デジタルに切り替える?
2015年4月、ソウルある小学校の授業時間。教卓や机の上のどこにも紙の教科書は見えない。その代わりに、タブレット PC(無線インターネットとPC機能を持つ携帯用電子機器)やノートブックPCが置かれてある。
授業が始まると先生は子供たちに、「教科書を開きなさい」という言葉の代わりに「科学教科書アプ(Application略字/応用プログラム)を押しなさい」と声を掛ける。
タブレット PCでアプを実行させる瞬間、前回の授業で勉強した教科書本文が画面に映し出される。前日に、先生の説明を入力させた電子ノートを拡大して重要な部分を再度チェックする。
蛙解剖の動画映像などを開いたりして、先生が子供たちのレベルに合わせて推薦した問題を説明していく。
国語の時間には、子供たちの写真に小説の背景を重ねたバーチャルリアリティプログラムを通じて、子供たちは小説中の主人公の気分を感じられる。
歴史の授業では、歴史を学びながら同時代の他国年表が浮び上る。これら紙の教科書ではできない授業だ。先生の隣にあるSmart TVはこの全てを大型画面で見せてくれる。
また、病気や怪我で入院した子供は、オンラインに接続することで病院で授業を受けられる。
このように子供たちは紙の教科書の代わりに「デジタル教科書」で勉強する時代が、4~5年以内に実現されるだろう。
教育科学技術部は6月29日に前述したような内容を骨格にする「Smart教育推進戦略」を発表し、2015年まで小中高校の全学年の全科目、全ての学生を対象にするデジタル教科書を開発、導入することにした。
しかし、デジタル教科書導入当初はデジタル教科書と紙の教科書を並行して使用する方針である。このデジタル教科書は既存のCD形態で配布されたデジタル教科書とは違った形態で、インターネットを利用した多様なマルチメディアコンテンツと連係するなど、豊富な参考資料と学習支援可能が追加される。
生徒と教師は必要な時に個別PCやタブレット PC、スマートフォンなど多様な端末機にダウンロードして活用することができる。既存のデジタル教科書は特定機器だけで活用できたが、今回のデジタル教科書はWebベースで開発されており、インターネット環境があるところならどこでも接続することができる。
国家学業達成度評価もインターネットを通じて行う方式に変わるという。
ソウル九一小学校の学生が教科書を読んでいる。
この学校を含め全国132学校を「デジタル教科書研究学校」と指定した。
息をつめて見守る教科書出版社
これまで教科書を制作してきた出版社は、政府のデジタル教科書導入計画に幾分不安な様子である。というのも、年間3000億ウォンにのぼる紙の教科書市場が大きく縮小するからである。一部の出版社は既にデジタル教科書時代適応のための準備に入っている。
ある出版社は教科書検定制度と関連した法令問題やデジタル教科書制作費用に対する方案が具体的に出てないのでもう少し状況を見守る予定だという。
紙の本は電子書籍より目の疲労が少ないだけでなく、人々がページをめくる時の感じと本固有の匂いなど言葉だけでは説明することはできない感性的な魅力を持っている。
一方、人々が紙の本を読む時は文中の場面を想像して、文脈を理解するために努力するが、電子書籍ではあらゆることを動画やイメージで見せるから思考が減ることになる。電子書籍は携帯性と便利さを持つ代わりに思考力と想像力を落とかもしれないが、このように完全なスマート教育実現のためにはいろいろ解決しなければならない問題が多い。
韓国イルジンPMS株式会社
李 在秀
(『JAGAT info』2011年8月号)