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この度『印刷白書2011』が完成、発刊の運びとなりました。刊行のご挨拶を申し上げます。
社団法人日本印刷技術協会
会長 浅野 健
昨年、印刷白書の発刊に際し、「世紀が変わった」と強く感じるようになった、と記したことを記憶しています。年が明け、中小企業にも、社会との協調、貢献がより求められ、環境変化が更に加速していることを改めて実感し、対応速度も同様に加速しなければと考えていました。
3月11日、東日本大震災の発生、巨大津波、原子力発電所における事故、風評被害、その後の電力問題、天災に人災が加わり、私たちはこれまで経験したことのない状況に直面しています。直接被災した地域が広域であったことから、間接的に何らかの影響を受けた産業、企業は国内にとどまらず海外へも波及しました。
震災後半年が経過した現在、表面的には徐々に落ち着きを取り戻しているように見えるものの、復興の実体は遅々して進んではいないようです。さらに、欧米の経済的混乱が現在の国力には不相応な円高をもたらし、経済大国を自負していた我が国の存在そのものが大きく揺れています。
戦後の印刷産業の歩みを振り返ると、混乱期、復興期を経て成長期を迎えましたが、この間、労働争議の多発、資金不足など多くの困難に遭遇しながら技術の向上に努力し、設備を整えながら近代化に努めてきたのです。欧米の資機材メーカーから多くを学んだ時代から、国内の資機材メーカーが国際的に評価される時代を迎え、我が国の印刷産業は自他ともに世界の中で胸を張ることができる水準になったのです。
活版全盛からオフセットへの転換、単色から多色へ、そしてデジタルの時代、暗室から明室へと移行したフィルムもフィルムレスに、平凸版からPS版に、さらにCTPに、2工程からダイレクトに、CEPSからDTPに、今日までの印刷物製造工程も次々と進化しました。この進化にも対応し、より正確に、より美しく、より速く、より大量に、さらにより安価に、を実現してきたのです。
「世紀が変わった」ことを強く感じるようになったのは、ITの進化によるものです。情報を伝える手段の進化です。この進化によってこれまではあり得ないことが現実になっています。圧政に苦しんでいた国民が国家権力を倒すことまで可能になっています。
このような「進化」によって開花した「文明」と3月11日の現実の間で私たちは何を考え、何を学び、今後どのように行動すべきなのでしょうか。
このような状況のもと、『印刷白書2011 』をお届けします。社会の中で印刷産業が果たすべき役割を改めて思考する参考にしていただければと願っております。
『印刷白書2011 』
2011年9月12日発刊