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編集者および編集者教育、日本語組版の標準化活動に関わってきた立場から、日本語組版について記すことにしよう。
組版については、これまで組版の発注や設計をするという編集者の立場からつきあってきた。経験した組版方式は、活字組版が長いが、1990年ころからDTPにもつきあいはじめたので、DTPとのつきあいも短いとは言えなくなった。
編集者教育として、書籍の編集・製作・校正などの教育カリキュラムや教科書・教材の開発、さらに、実際に学生を指導することも行ってきた。一方、日本語組版の標準化活動にも参加してきた。
こうした立場から日本語組版について、私が考えていることについて記すことにしよう。
どんな立場から日本語組版を学ぶにしても、その対象となる本や雑誌、その他の印刷物をよく知ることが大切である。ずいぶん昔になるが、ある先輩の編集者から、“編集者は趣味が読書だなんていうものではない、それは仕事である”といわれたことがある(主に書籍や雑誌の企画を考えるために読む必要があるという意味であったが)。
その対象を知り、それが読めるということは、組版結果を評価するという点でも大切である。組版の立場からいうと次の2点を心掛けるとよい。
ここでは、2の問題を考える前提についてふれてみよう。
どのように配置されているか観察する場合、最初はむつかしいことであるが、できるだけ目で見て判断できるようになるのが望ましい。文字サイズや字間・行間のアキなども、本文に使用するサイズであれば、それなりに目を鍛えれば判断できるようになる。また、字間を空けないで、文字を密着して並べていくベタ組なのか、字間が詰められているのか、逆に空いているのかも目でみて判断できる必要がある。
時間があれば、鉛筆で薄く枠を作成し、サイズの分かった見本を参考に書いてみるとよい。確認しようと思う印刷物の文字サイズや字間の大きさを、まず自分なりに予想をたて(これが重要)、そのうえで物差しや印刷文字スケールで確認するのもよい方法である。だんだんと予想が当たるようになれば、それだけ目が鍛えられてきたのである。
手元にある適当な印刷物の正確な組方を調べるのは、思っているほど簡単ではない。そこで、調べる印刷物も、最初は答えが分かっている印刷見本なり、組版関係の書籍などの組版見本などに挑戦するとよい。
最初は何もかも一度に見ることはむつかしい。図1に示した例を、一度読んだだけですべて見分けることができるのであれば、それは専門家である。自動車の運転も、慣れてくるといろいろ周囲を見ることができるが、最初はそうはいかない。印刷物を観察する場合も同じである。
例えば、ルビについて、その組方でなく、小書きの仮名(拗促音などの字面を小さくしたもの)の使用の有無だけ観察してもよい。従来はルビには小書きの仮名は使用しないというのが原則であった(そんな小さな文字は読めないだろうし、必要ないからと、金属活字にはルビ用の小書きの仮名は一般に準備されていなかったので使用できなかった)。しかしコンピュータ組版では簡単にルビ用の小書きの仮名が使用できるので、最近では、小書きの仮名のルビ使用例が増えている。あっ、この出版社も使い始めたか、でも、別のジャンルの本は使っていなかったが、……ということもある(奥付で刊行年の確認も必要)。こんなことから始めてもよいだろう。
また、行間は、読みやすさにとても影響する。そこで、読み始めはあまり気にしないで、ある程度読んだところで調べてみるとよい。新書判は、9ポイント前後の文字サイズの使用が多いが、こうした縦組の新書判では、1ページの行数はほとんどが16行である。たまに、17行や、15行、なかには14行の本もある。16行の場合の行間は5ポイントくらい、15行の場合は6ポイントくらいとするものが多いので、行数からある程度は行間を予想できる。これを比較して、読みやすさにどう影響するか(これがなかなか言葉にしにくいが)、考えてみるのもよいだろう。