本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2011年で第32回を数える「JAGAT印刷産業経営力調査」は、業績だけでなく戦略についても調べていることが他の調査と違う特徴だ。もちろん業界平均の指標を算出し、その推移を定量的に捉えることは大事だが、業績だけを見ても、それは単に経営の結果に過ぎず、なぜその結果になったのかがわからない。
業績(=結果)を生むのは行動であり、行動を決めるのは戦略だ。そして戦略は思考や状況判断から生まれる。つまり、戦略と業績の相関を調べれば、どのような戦略や思考が優位かわかる。どのように思考し、どのような戦略を選べば業績は良くなるのか。本調査は経営者の思考特性・戦略と業績の相関を調べてきた。
戦略に関する設問は、経営者の特性(創業者or二代目以降など)や社内意思決定パターンに始まり、戦略については1.財務、2.顧客 3.生産・営業・マーケティング、4.人材と変革の視点から、さらにそれぞれについて戦略・課題・コスト・重視している業績指標から構成している。
この5年を通じてこうした戦略に関する調査を継続してきたので、印刷会社における戦略と業績の相関がわかってきた。残念ながら2008年のリーマン・ショックを機に状況は大きく変化したが、業績良好企業の形を浮き彫りにできれば、自社と業績良好企業の差に業績改善のヒントを見つける確実な一助になる。
調べると、たとえばどういった工程を内製工程として持ち、どういった工程は社外のリソースを使って外注するか、つまり保有工程と業績の間には相関が見られない。後加工工程を持つ会社は利益率が高いなどという必勝パターンはなく、要は自社の状況に応じた投資判断が大事ということだ。
一方で、5SやQCといった小集団活動を重視する印刷会社の業績は過去5年を通じて継続的に平均的企業より高く、こうした運動や活動の継続と業績には強い相関があることがわかってきた。特に現在のような不況期は、業績良好な企業と自社や平均的な企業の違いを考え、今後の戦略立案に反映させることが有用だ。
2011年7月刊行の「JAGAT印刷産業経営動向調査2011」 では、2010年の調査結果から戦略と業績の関係について考察した。また、28日と30日の研究会セミナーでは、過去5年の調査結果まで深堀りして業績良好印刷会社の形について考える。
(JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 藤井建人)
■関連セミナー 【東京・大阪開催】
最新調査結果にみる印刷経営の現在と戦略
2011年9月28日(東京)、30日(大阪)
■関連ページ JAGAT BOOK STORE
【印刷産業経営力調査の概要】
概要:印刷会社120社から調査票を回収
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2011年2月~3月
「JAGAT印刷産業経営動向調査2011」
体裁:A4版、104ページ
定価10,000円(税込)、JAGAT会員特別価格5,000円(税込)
発行:社団法人日本印刷技術協会 研究調査部
購入:申込書 に必要事項を記入してFAX送信ください。
【構成】
1.2010年度の印刷会社の経営動向
(1)経営動向の概況
・環境変化に揺れない印刷会社経営を考える
・印刷市場と印刷経営の考察
(2)経営動向指標
・貸借対照表、損益計算書
・生産性、収益性、安全性、人員構成等
・1人当り指標(売上高、加工高、人件費、機械装置額等)
2.印刷会社の業績と経営戦略
(1)業績と経営戦略の概況
・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
・業績良好な印刷会社の戦略
(2)経営戦略
・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
3.印刷会社の設備動向
(1)設備動向の概況
・次年度の設備投資予定
・設備投資の傾向
・印刷機の保有、導入・廃棄意向、満足度
(2)設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
・製版・刷版
・印刷機付帯設備
・製本・後加工
(3)DTP環境
・PCの種類と台数
・アプリケーションの種類とバージョン
・データの入稿形態
4.参考データ
(1)セグメント別の経営指標
・データ:損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
・セグメント:2地域別(東京とその他地域)、従業員規模6段階別、業種業態6分類別、オフ輪の有無別)
(2)月次の各種前年比推移