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使用できる文字サイズの単位は、実務的にはどんな単位が望ましいのか、考えてみるのもよいだろう。
使用できる文字サイズの単位は、それぞれの処理系(アプリケーション)で決まっている。今日では複数の単位も使用できる処理系も多く、小数点以下の細かい単位で指示できるので、どんな長さの単位でもよいように思われる。しかし、実務的にはどんな単位が望ましいのか、考えてみるのもよいだろう。
その場合、国語辞書と同じように、“使い慣れた単位が最もよい”というのが答えとして考えられる。慣れた単位は、デザインする際に具体的にイメージできるからである。
私は、ポイント単位であれば、ある範囲の大きさがイメージできるが、級の場合はせいぜい10級から13級くらいの範囲しかイメージできない。
文字サイズは、表示体裁にアクセントを付けるものである。別の言い方をすれば、どのくらいの大きさの違いがあれば見た目の差が付くのか、という問題でもある。
書籍では文中で括弧書きする例が多く、この場合、文字サイズを1段階小さくする処理法がある。図1に例を、図2に同じ例に文字サイズを付けて示す。
単位がポイントの場合は、例1のように本文の9ポイント(9ポ)に対し、8ポイント(8ポ)で十分に差が付くように思われる。級数で指示する場合、例2のように本文の文字サイズが13級、括弧書きを12級にしたのでは、やや差が付きにくいので、例3のように括弧書きを11.5級とする例もある。例4はミリを単位とし、0.5mmの差を付けた例である。
差が付くという場合、1級(0.25mm)ではやや小さく、1ポイントの0.3514mm(又は0.3528mm)という大きさの差が人間の視覚能力にあっているといえるのかもしれない。整数の数値で指示したい場合、ポイントの利用が便利ということかもしれない。
ただし、ポイントはミリとの換算が面倒である。概算でよいのであれば3ポイントを約1ミリとすればよい。
図1
図2
文字サイズの刻み方も問題になる。どの程度の刻み方をすれば、見た目に自然に差が付いていくのだろうか。こうしたことは、経験の中から生みだされてくるものである。
その意味で、JIS Z 8305(活字の基準寸法)に掲げられている整数のポイントサイズは参考になる。次のような文字サイズの系列に整理できる(5ポイント以下はルビ用である)。
5―4.5―4―3.5……0.5ポ差
10―9―8―7―6……1ポ差
20―18―16―14―12……2ポ差
40―36―32―28―24……4ポ差
この大きさで文字サイズを変化させていくと、自然に大きさの差が付いていくように思われる(10ポは、10.5ポの方がよいかもしれない)。
もちろん、この通りに文字サイズを選ぶ必要は毛頭ないが、差が付く大きさとは、このようなものだと思うことで、印刷物を設計する際の参考になる。9ポイント前後であれば、1ポイント差でよいが、12ポイント以上では、2ポイント又は4ポイント程度の差を付ける必要があるということである。
今回のテーマとはずれるが、括弧内の文字を小さくした場合の行送り方向(行を並べていく方向、縦組では左右の方向)の配置も問題になる。一般には、縦組では、本文の文字サイズの左右中央に配置すればよい(中央そろえという)。
ただし、活字組版では、使用する材料(込め物)の関係で、9ポイント内に8ポイントの活字を使用する場合、一般に中央に配置できなかったので、縦組では右側をそろえ、横組では下側をそろえていた(その反対側に配置するよりは、落ち着いて見える)。
今日でも、この方式で配置する方法を採用している例も見かける。