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2011年2~3月にJAGATが調査した「印刷会社経営動向調査」と「印刷業クロスメディアレポート2011」では、印刷会社における電子書籍への意識調査を行なった。実務としてすでに取り入れている企業も多く、顧客からの引き合いも増えており、今後ますます積極的な取組み進みが進んでいくことが伺える結果となった。
2011年2~3月にJAGATが調査した「印刷会社経営動向調査」と「印刷業クロスメディアレポート2011」の中で、印刷会社における電子書籍への意識調査を行なった。「電子書籍元年」といわれた2010年が終わり、実際はどの程度の企業が取り組んでいるのか明らかとなった。
『印刷産業経営動向調査』によると、「新技術/サービス/システムの導入状況と満足度」という設問に対して、「電子書籍」と回答した企業が19.6%と、2010年の10.8%からほぼ倍増している。実務として電子書籍を導入する企業が回答企業の約2割を占めた。しかし満足度は低く、先行投資としての実践が多かったようだ。
また、「今後3年以内に導入予定の新技術/サービス/システム」について「電子書籍」は10.7%と「Web To Print」に並んでトップとなった。前年調査では7.0%、と10位だったため、この1年間で電子書籍への関心が高まり、対応可能な体制確立を急ぐ積極的な取り組みがうかがえる。
他方、『印刷業クロスメディアレポート』の「今後、意欲的なジャンル・キーワードについて」という設問で、「電子書籍」と回答した企業は40.8%となり、前年調査の28.1%から10%以上も伸びた。また、「(今後、意欲的なジャンル・キーワードについて)特に顧客からの引き合いの多いもの」でも、「電子書籍」が9.2%となっている。
その他にも、「紙の印刷以外にビジネス受注が可能なジャンル」という問いでは、「PCサイト構築」(51.6%)、「電子カタログ」(40.2%)に次ぐ3番目(39.1%)となっており、回答企業の約4割がクロスメディア対応の一環として、すでに受注できる体制を整えつつあることがわかった。
それぞれの調査における回答企業が異なるため、2つの調査結果に多少の違いはあるものの、クロスメディア対応に注力している企業ではいずれも「電子書籍」が今後の取り組みの重要キーワードとなっており、ビジネスの可能性や収益モデルの確立を求めて試行錯誤を繰り返しているようだ。
印刷会社は従来より、データをさまざまな目的に応じて加工する「コンテンツ制作」を得意としている。自社に電子書籍の制作体制やストアを持たない中小出版社や、それ以外から発行される出版物の電子書籍化と販売をサポートすることが、今後の印刷会社に求められる役割の1つとなるだろう。
(JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 小林織恵)
■関連書籍
「JAGAT印刷産業経営動向調査2011」
体裁:A4版、104ページ
定価10,000円(税込)、JAGAT会員特別価格5,000円(税込)
概要:印刷会社127社から調査票を回収
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2011年2月~3月
「JAGAT印刷業クロスメディアレポート2011」
体裁:A4版、104ページ
定価2,500円(税込)、JAGAT会員特別価格1,250円(税込)
概要:印刷会社184社から調査票を回収
内容:印刷業界のメディア多様化への対応に関する意識調査
期間:2011年2月~3月