本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
顧客の生活スタイルの変化に合わせ、通販会社の媒体戦略も変わり続けている。インターネットを中心にどの媒体と組み合わせて使うと有効なのか。
日本通信販売協会(JADMA)によると、2010年度の通販市場の売上高は前年比8.4%増の4兆6700億円、伸長率も2004年度~2006年度の10%前後の伸び率に次ぐ高い数値となった。流通全般はデフレなどの影響で消費低迷が指摘されるが、通販市場は2001年の2兆4900億と比較すると、この10年で約2倍となっている。
通販各社が広告媒体利用内訳をみると、1位が「インターネットPC」の92.1%で、以下、「DM(リーフレット)」73.2%、「カタログ」61.0%と紙媒体が続く(JADMA『通信販売企業実態調査報告書2009』)。近年のスマートフォン人気の影響から「インターネット携帯」も伸び、今後も広告媒体のクロスメディア化は進んでいくだろう。
インターネットに押され苦戦の続くカタログだが、通販各社における昨今のカタログ戦略を見ると、ターゲットを絞ったスペシャル版の創刊が目立つ。中でもファッション分野では従来の「F1層」を狙いつつも、カタログ利用率の低い若年層に焦点をあて、インターネットへ誘導するカタログを立ち上げるなど変化が続いている。
では、大手カタログ通販会社のインターネット売上高はどうなっているかというと、各社とも拡大しているようだ。特に、最初からカタログを使用せずにインターネット上で商品を見て、そのままネット上で購入する「純ネット型」購買行動が増加している。
大手カタログ通販会社の千趣会は、2010年12月1日にベルメゾンと利用顧客双方向のコミュニケーションを構築するファンサイト「ベルメゾンデッセ」をオープンした。ベルメゾンデッセは会員制で、登録者はベルメゾンの商品モニターやアンケート、商品開発プロジェクトなどへも参加できる。
また、ユーザが同テーマで話す「ベルチャット」や家事を楽しみ生活をする「カジドル」が、日々の工夫やアイデアを紹介する「カジドルダイアリー」などユーザ同士のコミュニケーションをはかるコンテンツや、Web講演会のUstream配信やtwitterと連動したキャンペーンの開催など、SNSを使った展開も積極的に始めている。
千趣会ベルメゾンファンサイト「ベルメゾンデッセ」。ユーザーを楽しませるコンテンツがたくさんある。
ベルメゾンデッセは、千趣会が女性たちの生活に密接に関わり、多くの知識や培ってきたノウハウを生かして多面的な研究活動をする「ベルメゾン生活スタイル研究所」を中心に運営されている。意識の変化や新しい価値観の芽生えをとらえ、変わり続ける女性たちの生活スタイルに合わせたコンテンツ展開を行っているようだ。
インターネットの台頭により、従来カタログが持っていた役割や戦略も変化している。様々な媒体を組み合わせたクロスメディア展開がよりいっそう進んでいくだろう。個々の媒体が持つ特長をうまく組み合わせて使い、顧客への有効なアプローチ法を確立することが、今後の戦略で重要になっていく。
2011年10月27日(木) 14:00-16:00(受付開始:13:30より)
2人の講師より、通販会社のクロスメディア最新事例やカタログの最新戦略とカタログの将来、千趣会におけるカタログとWebの連動、SNSを用いた新しい展開とベルメゾンファンサイト「ベルメゾンデッセ」の運営目的と今後について聞く。
(プリンティングマーケティング研究会 小林織恵)