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残し伝えるべきものを残し、変えるべきものを変えること。変化を恐れず挑戦することで企業は存続する。【経営シンポジウム・特集1】
変わること・変わらないこと
「不易流行」の意味を手元の『広辞苑 第五版』で見ると、「(芭蕉の俳諧用語)不易は詩の基本である永遠性。流行はその時々の新風の体。共に風雅の誠から出るものであるから、根本においては一であるという。」とある。
ついでに「経営」の意味も見てみると、「③継続的・計画的に事業を遂行すること。特に、会社・商業など経済的活動を運営すること。また、そのための組織。」とある。
いつまでも変化しない「不易」と、時代に応じて変化する「流行」が、根本において同じということは、変わらないことが変わることであり、変わることが変わらないことでもあることになる。
17音という限られた表現の中で、常に新しさを追求しなければ陳腐化してしまう俳句が、今日まで生き残っているのはまさに「不易流行」によるものだろう。
企業の継続に必要な「残し伝えるべきもの・変えるべきもの」
「不易流行の経営」のキーワードは、継続性と変革性である。残し伝えるべきものはきちんと残し、変えるべきものは勇気をもって変えることによって、企業は継続することができる。
現在の経営環境では多くの経営者が「待ったなし」の切迫した状況にある。だからこそ、「スピード感」=時間をお金で買う価値観が重視され、「即戦力になる人材」や「明日の飯の種になる情報」が求められる。しかし、「即戦力になる人材」も組織に根付かなければ成果に結び付かない。「明日の飯の種になる情報」は当然のことながら陳腐化しやすい。
武道では、「相手がどう出るか」に心がとらわれて、待ちの状態に固着して、身動きならない状態を「居着き」と呼ぶ。自分が常に「後手に回っている」ことを忘れた、必敗の構造である。
「変化する市場にいち早く対応しよう」という考え方も、それだけでは「居着き」になりかねない。「不易」と「流行」という、対立するものを対立したまま両立させることこそ、「居着き」を避けることにつながる。そして、それによって企業を永続させることが、「不易流行の経営」の真意である。
「真の経営者」が求められる時代
企業再生ビジネスの第一人者、越純一郎氏は「経営者に必要なものは“高い志”と“本物の勇気”」であり、企業経営全般に関わる7つのキーワードとして、「経営力、営業力、生存力、戦闘力、現場人材、リーダーシップ、夢の共有」を挙げている(JAGAT大会2011 )。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)で、製造業を中心に多くのコンサルティング実績をもつ、一橋大学大学院の菅野寛教授は、「日本企業は経営資源(ヒト・モノ・カネ)において、世界の最高水準を走っている。にもかかわらず、多くの日本経営が低迷しているのは、経営資源を活用できる『真の経営者』が不足していることが一因ではないか」という。
いかにして優秀な経営者になり、後進を育てるか。菅野教授は、コンサルタントとしての経験と、著名経営者との議論をもとに、リスクや失敗に対する姿勢や考え方、定石、洞察力など、独自の「経営者としてのスキルセット」を提唱している(『BCG流 経営者はこう育てる』)。
経営者の育成は日本企業にとって喫緊の課題であるが、「真の経営者」を育成することは可能なのだろうか。「経営者に必要な能力は、先天的に与えられた資質ではなく、後天的に習得可能なスキルである」と菅野教授は断言している。
■関連イベント
「経営シンポジウム2011 不易流行の経営~事業承継と新創業を考える」
2011年11月22日(火)千代田区立内幸町ホール
一橋大学大学院の菅野寛教授による
基調講演「経営者になる 経営者を育てる」では、
優秀な経営者に必要なスキルを明らかにし、その育成法を考えます