本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2011年8月刊「JAGAT印刷業クロスメディアレポート2011」から
2011年8月にまとまった「印刷業クロスメディアレポート2011」では、JAGAT会員企業を対象にクロスメディア対応状況の調査結果をまとめている。回答184社のうち、本稿では特に印刷業及び印刷関連業(135社)からの回答のみに焦点を当て、印刷業界のクロスメディア対応を考察する。135社の内訳は、人員規模別に1~49名が39%、50~99名が28%、100名以上が33%と、ほぼ1/3ずつ。
印刷会社は平均3~4メディアに対応
普及拡大が目覚しいソーシャルメディアについて、「活用していない」のは「Twitter」が51%、「Facebook」が60%だった。どのように使うか、何を持って使っているとするか、使って本当に事業上の効果があるか、など判断の分かれる部分は多く残すものの、2011年春時点では印刷会社の過半数が活用していなかった。
「クロスメディアの対応可能ジャンル」の上位は「PCサイト構築(58%)」「電子カタログ(43%)」「電子書籍(39%)」「モバイルサイト構築(39%)」「デジタルサイネージ(30%)」。
既に4割近くの印刷会社が電子書籍に対応可能としている。また、印刷物以外に対応できるジャンルは1社平均おおよそ2.7で、印刷物を含めて平均3.7メディア(またはデバイス・ジャンル)弱に対応可能というのが回答した印刷会社の平均像のようだ。
提案機会は増加の一途、技術革新への対応が課題
「(1年前と比較して)顧客からクロスメディア提案を求められる機会」は「増えた」が55%、「減った」は0。顧客はクロスメディア提案を強く求めている。
顧客からの引き合いが多いジャンル上位は、「PCサイト構築(36%)」「電子書籍(10%)」「電子カタログ(10%)」「デジタルサイネージ(4%)」。PCサイト構築以外は目だって多いものがない。対応の準備はあっても、なかなか引き合いに結びつかない、しかし準備をしておかなければ引き合いに対応できない、というジレンマが浮かび上がる。
「クロスメディア対応への障害・不安材料」の上位は「クロスメディア業務を遂行する人材不足(68%)」「技術革新のスピード(54%)」「設備投資予算(33%)」「人材育成予算(32%)」「社内の情報共有・ノウハウの明文化(30%)」。人材と予算といった社内リソースの整備や配分が技術革新のスピードになかなか追いかないようだ。
過半がクロスメディア人材の提案力向上を最重視
「人材育成において最重視していること」で多く回答されたのは「企画力・提案力(63%)」「ITスキル・技術開発力(47%)」「顧客との折衝力(47%)」「外部制作ディレクション能力(44%)」の4つ。クロスメディア人材は社内調整や顧客との折衝、協力会社とのコミュニケーション能力やマーケティング能力、プランニング力などが特に必要と認識されている。
「今後、意欲的なジャンル・キーワード」の上位は「電子書籍(45%)」、「iPadなどタブレット端末へのコンテンツ制作(45%)」「プリントオンデマンド(41%)」「スマートフォン端末へのコンテンツ制作(39%)」「デジタルサイネージ(27%)」。新しいデバイスへの出力を課題に挙げる印刷会社が多い。
クロスメディアビジネスの採算性と難しさ
「クロスメディア提案の利益貢献度合い」は「かなりある」と「少しある」が合計39%、「あまりない」と「まったくない」が合計59%。6割近くの印刷会社でクロスメディア提案が利益貢献していない。未曾有の変革期にあって簡単なことではないが、増える提案機会を好機とし、人材育成や技術のキャッチアップを急ぎ、クロスメディアをビジネスに結び付けていくようにしたい。(研究調査部 藤井建人)