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基本版面とは文字や図版を配置する基本的な枠組であり、組方向、段数と段間、文字サイズ、字詰め数、行数、行間で指定する。
印刷物を作成する場合、一般になんらかの枠組を考え、枠組に応じて文字や図版を配置する。書籍の場合も同様で、文字や図版を配置する基本的な枠組として、組方向、段数と段間、文字サイズ、字詰め数、行数、行間で指定される版面を設計する。
この基本として設計される版面体裁を“基本版面”と呼んでいる。(なお、“基本版面”という用語は、1972年に刊行された“校正技術”で使用された用語である。)
基本版面については、仕上りサイズに対する位置を一般に見開きの状態で決める。さらに、柱やノンブル(ページ番号)に使用する文字や配置位置も決定する。
図1に、1ページであるが例を示す。
図1
基本版面として設定した枠組に、文字・図版・表をどのように配置したらよいか。図1に示した文字位置、行の配置位置、版面サイズは、どの程度の強制力を持っているか、という問題でもある。
簡単に原則を示すと以下のようになる。
1 基本版面として決定した版面や段組など、その構造は可能な限り維持し、その領域内に各要素を配置する。しかし、例外がある。
2 基本版面として決定した行の位置に、それぞれの行を可能な限り配置する。しかし、例外がある。
3 基本版面で決定した文字位置に、それぞれの文字を可能な限り配置する。しかし、例外がある。
例えば、図版や表はできるだけ版面内に配置することが望ましい。これは見た目の体裁上の問題もあるが、かつて活字組版において各ページの組版のサイズが異なると様々な作業上の問題が出るという理由もあった。
コンピュータを利用した組版ではこうした問題はないので、図版などを版面の領域をはみ出して配置することも簡単にできる。ただし、それが体裁としてよいかどうか、よく検討したうえで選択する必要がある。
また、版面の先頭行に付くルビや圏点は、基本版面で決めた行位置を維持するために、版面の外側に配置する。
行位置は、原則として基本版面で決めた行位置に揃えて配置する。文中の括弧書きの文字サイズを小さくすることがあるが、これの分量が多くて数行にわたる場合も基本版面で決めた行位置に揃えて配置する。
しかし、本文とは別の段落となる注や引用文など文字サイズの異なる要素や別行の見出し、別行の分数式、表・図版が挿入された場合は、なんらかの工夫が必要になる。
注や引用文の文字サイズを小さくした場合、行間もそれに応じて狭くしないとバランスが悪くなり、当然、基本版面で決めた行位置に配置できなくなる。
この場合、注や引用文の直後の本文の行位置を基本版面で設定した行位置に配置し、基本版面の行位置を維持する。
見出しでも、基本版面で決めた行位置を基準に、その整数行の領域に配置する(この方法は“行取り”という)。そうすれば、影響を他に及ぼすのを防ぐことができる。
数式などを行取りで配置する方法もある。その場合、同一ページに上下の幅の異なる分数式が存在すると、分数式の前後の行間が不揃いになる。そこで、版面の先頭の行と最後の行位置は揃えるが、分数式の前後の行間を均等にする方法も行われている(この方式の方が多い)。
図2と図3に例を示す。
行中に基本版面で設定した文字サイズですべて配置できればよいが、そうではない場合も多い。
全角でない文字・記号や異なるサイズの文字を挿入する、異なるアキをとる、行頭禁則、行末禁則の処理を行うといったことがあり、基本版面で決めた文字位置に配置できないケースも多い。
そこで、前回に簡単に説明した“行の調整処理”の問題が出てくる。
(※原則と応用 【日本語組版とつきあう 3】 )
また、図版や表を挿入した場合、縦組では、その下側に文字を配置する例も多い(“回り込み”という)。この場合、配置する行の先頭の文字は、基本版面で決めた文字位置にしないと、すべての行で“行の調整処理”が必要となり、不必要に字間が空いたり、約物の前後が詰められたりするので、注意が必要である。
このように、基本版面で設定した枠組に文字などをどう配置するかは、組版処理するうえで、とても重要な問題である。