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『印刷白書2011』では、工業統計、中小企業実態基本調査、印刷統計など、多くの有用な調査結果から必要なデータを抽出し、時系列比較やグラフ化によって、印刷産業の全体像を描いている。
経済産業省が9月30日に発表した「平成22年(2010年)工業統計速報」(4人以上の事業所)によると、「印刷・同関連業」の事業所数は1万3883(前年比6.5%減)、従業者数29万5722人(同4.3%減)、製造品出荷額等5兆9609億59百万円(同3.4%減)で、2009年に比較すると下げ幅は鈍ったが、縮小傾向は依然として続いている(図表1参照)。
印刷産業出荷額を約6兆円と見るか、5兆円台と見るか。数字から見れば約6兆円だが、市場がシュリンクしている中では「ついに6兆円割れ」と見る気配が濃厚だ。しかし、工業統計(速報値)には、全事業所の約半数を占める3人以下の事業所は含まれていない。
ちなみに中小企業庁「平成22年中小企業実態基本調査」(平成21年度決算実績)によれば、印刷・同関連業の個人企業9670社(平均従業者数2.6人)の売上金額は1201億52百万円となっている。そこで、全事業所の出荷額を推計するために、この売上金額を工業統計速報値に加えると6兆811億円となる。
あるいは、従業者4人以上の前年比3.4%減を、全事業所にも当てはめると6兆1056億円となる。図表2は4人以上の売上構成比を97.7%と仮定して算出した全事業所の出荷額で、6兆1012億円(前年比3.5%減)となった。いずれにしても全事業所の出荷額は6.1兆円前後と推測される。
印刷産業の市場規模に関するデータとしては、工業統計、中小企業実態基本調査のほかにも、経済産業省「印刷統計(生産動態統計調査)」「企業活動基本調査」、財務省「法人企業統計調査」などがある。印刷産業が独自に行っている調査には、全印工連「印刷業経営動向実態調査」、JAGAT「印刷産業経営力調査」「印刷業毎月観測アンケート」などがある。
JAGAT『印刷白書』では「データをして語らしむ 」ことを目的に、多くの有用な調査結果から必要なデータを抽出し、時系列比較やグラフ化によって、印刷産業の全体像を捉える試みをしている。しかし、調査時期や調査対象などの違いから、調査結果が矛盾して見える場合もある。
『印刷白書2011』の掲載数字に関する問い合わせが何件か寄せられたことから、白書に掲載した主要統計のポイントを解説することで、本誌の内容をより理解していただけるのではないかと考えた。そこで今回は、最も調査規模が大きい「工業統計」について紹介したい。
「工業統計調査」は統計法に基づく「基幹統計調査」で、製造業の実態を把握することを目的に、経済産業省が毎年12月31日現在で実施している。西暦末尾0、3、5および8年については全数調査を実施し、それ以外の年は従業者4人以上の事業所を調査対象とする大規模な調査のため、速報値が公表されるのは翌年9月下旬で、翌々年1~2月に概要版が公表され、3~4月以降に「工業統計表」(産業編、品目編、市町村編、企業統計編など)として確報値が公表される。
工業統計、商業統計などの産業別の統計調査は、実施時期が異なるために産業間の正確な比較が困難だった。そこで、全産業分野の全事業所・企業を対象とする「経済センサス」(経済に関する国勢調査)が新設された。これに伴い、2010年以降の工業統計調査は、4人以上の事業所が対象となり、「経済センサス-活動調査」の実施年は工業統計調査を中止することになった。
現時点で工業統計の最新データは平成22年速報値で、2010年12月31日現在で実施した調査結果の主要項目について、産業別、従業者規模別(4人以上・10人以上)、都道府県別に集計したものである。全事業所の推計値は3月以降の「産業編」の公表を待つ必要がある。
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