本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
縦組の中の欧字が1字の場合なら縦向きにして配置すればよいが、欧字が2字以上になる場合、いろいろな配置方法がある。
欧字が多く入る印刷物は、横組にすればよいが、さまざまな理由から縦組を選択する場合がある。縦組の中の欧字が1字の場合、漢字や仮名と同じように縦向きにして配置すればよい。欧字が2字以上になる場合、次の4つの方法がある(図1参照)。
1 横向きにして配置
2 1字1字を縦向きにして配置
3 縦中横の機能を利用し、文字を縦向きのまま水平方向に左から右へ配置
4 単位記号などで合字にした文字があり、それを使用
合字の単位記号は、全角の枠内に無理に詰め込んでいるので、他の欧字と字形のバランスが崩れる場合もある。表組など、スペースの関係でどうしても必要なときに限って使用した方がよい。
図1
縦組の中に挿入する欧字・欧文の主な例としては、次のような場合がある。
1 複数の文で構成される欧文の段落
2 2つ以上の単語で構成される欧文の文
3 1つ又は複数の単語で構成される欧文の言葉(すべて小文字又は先頭文字が大文字)
4 複数の大文字で構成される欧字の言葉(一般に頭字語)
その他、スモールキャピタルを使用した例もある。
このように様々なケースがあるので、1冊の書籍内で図1のどれか1つの方式で統一して処理するには無理がある。どのような場合に、どのような配置法を選べばよいかが問題となる。
上記使用例の1や2の場合、欧字の向きを時計回りに90度回転し、欧字を横向きにして配置する。この方式で使用する欧字は、個々の欧字の字形に従い字幅が異なるプロポーショナルの欧字とする。読者は頭を少し曲げて読むか、本を回転して読むことになる(ただし、校正作業では、見落としをしないように、正しい向きにして点検する必要がある)。
なお、1の場合は、それだけで1ページを構成するか、あるいは別に枠に囲み、図版のように処理すれば、正しい向きで配置できる。
3の場合、1字1字を縦向きにして配置する方法(図2)と、プロポーショナルの欧字を使用し、欧字を横向きにして配置する方法(図3)とがある。図3の場合、漢字や仮名との字間を一般に四分アキにして配置する。
図2の方法は、正しい向きで欧字が読めるというメリットはある。しかし、小文字の欧文単語は、1字1字を読むというよりは、文字列全体を一度に読むといった読み方をする場合が多く、図2のような例では、読むのにやや苦労する。向きのデメリットがあるにもかかわらず、プロポーショナルの欧字で、図3のように横向きにして単語として認識できるようにした方が読みやすい。また、小文字には、a(短字という)に対し、bやgのように長字とよばれる文字があり、図2の組方では字間が乱れることがある。
図2
4の頭字語の場合、多くは縦向きしている。頭字語は、エックスエムエル(XML)のように1字1字読むケースと、リスプ(LISP)のように1つの単語のように読むケースがある。
大文字だけで構成された欧文は、とても読みにくいが、それは欧字を1字1字認識していくからかもしれない。LISPのような例も含め、正常な向きで1字1字縦向きにして並べていく方法に合理性がある。ただし、例は少ないが6字とか7字以上の例もあり、字数が多くなると横向きの方が読みやすくなるので、一定の字数以上は横向きとする方法もある。
BRICs(ブリックス)といった小文字混じりの頭字語もあるが、これも同じ扱いでよい。しかし、小文字が混じると、文字によっては字間がふぞろいになる例もでてくるので、いっそのこと横向きにしてもよい。また、大文字だけで構成された欧字でも、2語以上の場合は、語間処理を考えると横向きの方がよいだろう。
単位記号など2字で構成される欧字、下付きや上付き又はダッシュがついた欧字などでは、縦中横の配置が考えられる(2字の欧字は、図1の例のように行間へのはみ出しが多くなる例もあり、あまり勧められない)。
スモールキャピタルには、紀元前(BC)に使用例がある。これは数字との組合せになるので、すべて横向きにする方がすなおだろう。また、人名の姓の表記に使用する例もあるが、先頭は大文字なので、大文字+小文字のケースと同じ扱いでよい。
欧字の向きを機械的に決めるのはなかなか難しいが、1つの方法として、欧字1字の場合と、大文字で構成された単独の言葉のみ1字1字縦向きにするが、それ以外は、すべて横向きにするという方針が考えられる。