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チラシは2011年秋から需要回復へ
■折込チラシ:出稿枚数は9月に7カ月ぶりプラス
折込広告の市場規模は、前年比3.0%減の5279億円、2007年から4年連続減少だ。しかし減少幅は徐々に小さくなり、月別では2010年10月から2011年2月まで、出稿枚数は5カ月連続のプラスとなっていた。ところが震災の3月は-26.8%、以降も4月-11.6%、5月-8.4%と大きく落ち込んだ。6月以降は-2.3%、-1.0%、-2.8%と急回復、そして9月は速報ベースで+1.0%と7か月ぶりの増加に転じた。こうした月次推移を見ると、折込チラシは景気変動に敏感なメディアであることが分かる。その折込チラシの2011年の動きには次のような特徴がある。
過去3年大きく落ち込んでいた不動産業向けチラシが、8月までの累計で-0.1%とほぼ下げ止まった。全体の約4割を占める最大シェアの流通業向けチラシが7月-3.0%、8月+0.8%と月を追って回復し始めた。教育・教養事業向けチラシが8月まで累計で+4.7%と高い伸びになっている。
出稿枚数は下げ止まっても、サイズダウンや裏白などの影響は残っているようだが、7月以降は震災による行き過ぎた需要減の影響は確実に薄れている。
■フリーペーパー:加熱期から安定期へ
フリーペーパー・フリーマガジンの市場規模は2640億円だ(2010年)。この広告費は雑誌広告(2733億円)と同じぐらいで折込広告(5279億円)の約半分といった規模だ。2008年から3年連続減少ながら、メディアとしては依然一定の市場規模を有している。
JAFNA(日本生活情報紙協会)の調べによると、創刊紙誌数は年間100弱で2009年から横ばい傾向となり、2007年までの過熱的な状況から安定的な状況に移った。創刊紙誌は、コミュニティペーパーとターゲットペーパーがほぼ同数で合わせて約7割を占める。ニュースペーパーと広告マガジン・クーポンマガジンは合わせても1%しかない。フリーペーパーに地域性や共感性を求める傾向が強まっている。一方、『pontab』や『なんば経済新聞』など、これまでネットオンリーだった媒体が新たにフリーペーパーを創刊する動きも見られる。ネットを見ない層にアプローチするためフリーペーパーが選ばれているという。
■社内報:初のWeb社内報減少、進む紙の再評価
社内報を発行する企業数は定かではないが、一説には2~3万社といわれる。『社内誌白書2011』(ナナ総合コミュニケーション研究所)によると、「組織における社内広報業務の重要度」は、「不可欠な業務」67%、「対外広報などではないが必要な業務」25%と認識されている。「不要な業務」と回答した会社は回答全440社においてゼロだった。
社内広報の目的は、「社内情報の共有(86%)」「経営理念・ビジョンの浸透(72%)」「経営方針の周知徹底(66%)」「会社の現況の伝達(66%)」の4回答がとくに多く、適正な社内世論の形成を目指す回答が多い。
近年はWeb社内報が増えてきた。しかし回答を見ると、「電子メディアがあれば印刷社内誌は不要になる」と答えた会社は9%しかない。Webオンリーに移行しても、すぐ紙に戻ってきた会社も少なくない。WebオンリーではOBや出向者が見られないなどデメリットが多く、前述のような社内広報の目的を達成できないことが理由のようだ。情報共有が目的なのに、情報共有を犠牲に経費を節減しても意味がない。Web社内報を導入の会社は調査開始以来8年で初の減少に転じたという。
市場規模は電通「日本の広告費」に基づく。折込広告の出稿枚数は東京都折込広告組合「首都圏月間折込広告調査REPORT」に基づく。
2011年7月29日 プリンティング・マーケティング研究会ミーティング「変化する折込・フリーペーパー・社内・広報誌の最新事情」より。(研究調査部 藤井建人)