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欧文の印刷文字は、縦組で1字単位で縦向きにして使用するものを除くと、文字ごとに固有の字幅をもっている。
書籍に使用する和文の印刷文字の字幅(字詰め方向の文字の幅)は、原則として全角である(モノスペース)。なお、字幅とは、文字を配列する方向(字詰め方向)の仮想ボディの大きさである。
欧文の印刷文字は、縦組で1字単位で縦向きにして使用するものを除外し、文字ごとに固有の字幅をもっている(プロポーショナル)。
活字組版における欧文活字の字幅は、読みやすさを維持するため、文字サイズが小さくなるに従い相対的に字幅は広がり、大きな文字になるほど字幅を狭くしている。
欧文活字は、母型から活字を鋳造する。この母型は、別に用意した原図をもとに作成する。和文活字の場合、字数が多いので、一定範囲の大きさでは同一の原図を使い、縮小率を変えて母型を作成していた。これに対し、欧文活字では、字幅や線の太さを調整するために、鋳造する文字サイズごとに原図を用意していた。
コンピュータ組版ではないが、モノタイプ用欧文活字のバスカービル(モノタイプ社、イギリス)の字幅がどのように決まっていたかを示す。
(モノタイプ社の資料を元に記述されている“出版編集技術〈第二版〉下巻”(日本エディタースクール出版部、1980年)の記事による)
これは欧文活字のあくまで一例であり、また、欧文の印刷文字の固有の字幅は、フォントごとに異なっているが、字幅の考え方として参考になる。
1)1/18が最小単位の基準
この活字はユニット制とよばれる方法を採用しており、全角の1/18を最小単位の基準とし、その整数倍で字幅を設定している(後述するが、正確にいうと基準が全角でない場合がある)。例えば、小文字のaの字幅は、最小単位の9倍であり、1/18×9の計算から、基準が全角の場合の字幅は二分となる。
2)主な文字の字幅
主な文字の字幅は、次のようになる。アラビア数字以外の文字は、文字の“=”の後ろに1/18の何倍であるかを示す数値を掲げる。
・大文字 A=13 B=11 C=13 D=14 E=12 F=11 G=14 H=15 I=8 J=8 K=15 L=12 M=18 N=14 O=15 P=11 Q=15 R=14 S=10 T=13 U=15 V=14 W=18 X=15 Y=13 Z=12 &=15
・小文字 a=9 b=10 c=8 d=10 e=8 f=5 g=9 h=10 i=5 j=5 k=9 l=5 m=15 n=10 o=9 p=10 q=10 r=7 s=6 t=6 u=10 v=9 w=13 x=9 y=9 z=8
・アラビア数字 1234567890=すべて9
・約物 ,=5 .=5 :=7 ;=7 -=6 (=7 )=7 [=7 ]=7 ?=10 !=7 /=6
3)いくつかの文字の字幅
字幅の基準(詳細は後述)が正確に全角であれば、アラビア数字の9という数値から、アラビア数字の字幅は、1/18×9=1/2の計算から、字幅は二分と考えてよい。Mは18なので全角、コンマやピリオドは5なので、四分よりはわずかに大きい。
4)基準となる全角のサイズ
前述したように、文字サイズにより相対的な字幅を変更する必要がある。モノタイプ社のこの例では、基準となる全角を変更することで実現している。それを次に示す。
この字幅の基準は、それぞれの文字サイズにおける基準となる相対的な全角の大きさである。先に掲げた数値が文字サイズ、後ろの数値が、字幅の基準である(ポイントは“ポ”と略す)。
6ポ→6.75ポ、8ポ→8.25ポ、9ポ→9ポ、9.5ポ→9.5ポ、10ポ→10ポ、11ポ→10.75ポ、12ポ→12ポ、14ポ→13ポ
5)実際の字幅
9ポ、9.5ポ、10ポ、12ポの場合、字幅の基準は文字サイズと同じである。したがって、基準となる全角は文字サイズと同じである。
これに対し、それ以外の8ポや6ポの文字サイズの基準となる全角は、文字サイズより大きくなり、文字の字幅は相対的に広くなる。6ポの“M”の字幅は6ポでなく、6.75ポ、8ポの“M”の字幅は8.25ポになる。
これに対し、14ポの“M”の字幅は13ポとなる。9ポの“M”の字幅は、文字サイズと同じ9ポである。
アラビア数字の字幅でいえば、次の計算から、8ポは4.125ポ、9ポは4.5ポ、14ポは6.5ポとなる。
8ポの場合 8.25ポ×1/18×9=4.125ポ
9ポの場合 9ポ×1/18×9=4.5ポ
14ポの場合 13ポ×1/18×9=6.5ポ
ところで、上記のアラビア数字の字幅は、二分か、それに近い字幅である。しかし、和文文字の字幅は全角であるので、和文との混ぜ組に使用するアラビア数字の字幅は、二分が望ましい。和文中に混ぜてアラビア数字を配置する場合、その前後を一般に四分アキにしている。この方法の場合、アラビア数字の字幅が二分であれば、奇数桁では、行長の調整が発生しない可能性があり、合理性がある。
OpenTypeフォントには、字幅を二分(半角)とした字形があるので、こうしたものを使用してもよい。
図1にアラビア数字の字幅が二分でない例、図2に字幅を二分(半角)とした例を示す。
図1
図2