見た瞬間に理解できるものを 【Interview・4】
掲載日: 2012年02月07日
【Interview】 JAGATと何らかの接点のあるデザイン、アート、ビジネスのキーパーソンに聞く。第4回目は、昨年と今年のpageポスター、ツール類のデザインをしたエコーインテック(株)クリエイティブデザイナー中島瑞穂氏に話を伺った。
●page2012 ポスターデザインのイメージは
――今年のpage2012のポスターデザインで心がけたことを教えてください。
中島:今回のテーマが「PAGEからpageへ――ePowerで新領域へ」ということですので、ePowerと新領域を表現するのにふさわしいものを考えました。eの力強さとそこから未来への広がりを持たせていくイメージです。
――それで虹のように広がっていくデザインですね。アイコンもちりばめています。
中島:見た瞬間に理解することを心がけました。新しい領域というのは、未来は必ずしもバラ色ではないかもしれないけど、明るい方向に向かっていく。アイコンを並べているのも一つの媒体だけでなく、今まで気づかなかったビジネスが近くにある、見る方向を変えればそういったことが見えてくるのではないかと思いました。
――中島さんには昨年PAGE2011「情報デザイン新時代」でもポスターデザインをお願いしました。
中島:昨年は「情報デザイン」とはどういうことかを自分なりに考えました。デザインは伝えようとする人の「想い」をどうやって伝えたい相手に届くのか、その仲立ちをすることだと思っています。
――そこでPAGE2011では、迷路の中の道標のデザインにしたわけですね。それは周囲をいつも見渡す、見ている見るものすべてに興味があるというにもつながりますか?
中島:そうですね、全方位見るものすべて気になります。普通に歩いていても気がつくといつも観察している。たとえば道路標識のデザインや書体周りが気になります。見ることでどういう仕組みでものを伝えようとしているのかを感じ取るようにしています。
――それは情報選択、情報デザインの発想に近いですね。
中島:昨年のテーマ「情報デザイン新時代」はまさにそうでしたが、「情報の伝え方」が大切なんだと思います。
●デザイナーへの転進
――もともとデザイナーになりたかったのですか。
中島:小さい頃から絵を描くのが好きで、印刷物が好きでした。子供のころからいつも読んだり見たりするものにとても興味を持っていたようです。最初に就職したのが製版会社で、はがきやチラシ、名刺作成などをしていました。一番初めの頃はオペレーション業務メインでしたが、配置の工夫や目を引くしくみ、どうしたら喜んで見もらえるか、などについて考える事は大好きでしたので、自分ならこうしたいとい気持ちからデザインやカット描きなど自己流で制作していくうちに気に入ってくだるお客様がいて、たびたび「あなたのこの雰囲気のものを」とご発注いただくようになりました。
――中島さんの年代だとDTPは当たり前であり、最初からデジタルが主流で旧来のアナログ的な発想とは違うのでしょうか。
中島:私の場合はまずは手でイラストを描いてみる、手を動かすことからはじめます。私は美大で本格的にデザインを学んだわけではありません。でも今さらながらデッサンの重要性は感じており、ものを形にすることの基本があると思います。手を動かし、考えながら仕事をしているとつくづく毎日が勉強だと感じます。新しい情報は常に入ってきますし、それを吸収していかなくはいけない。情報を収集することは不可欠で、一生勉強が続くのだと思います。
――影響を受けた、もしくは好きなデザイナーはいますか。
中島:R25の表紙や日本たばこ産業の大人たばこ養成講座、東京メトロのマナーポスター「家でやろう」(2008年、2009年)「またやろう」(2010年)のイラストで有名な寄藤文平さんのデザインがすごく好きです。メトロのポスターはマナーポスターなのにちっとも説教くさくない。「マナーは遵守すべきだ」としかめっ面で言うのではなく、この人を介するとこんなに面白く伝えることができるのかと感心してしまいます。
●親しみやすいデザインを心がける
――page以外でもJAGATとの関わりはありますね。
中島:以前に資格認証制度のポスターをやらせていただいたことがあります。また胆道閉鎖症の便色カードでお手伝いさせていただいています。
――2012年4月から厚生労働省の通達で、母子健康手帳の改訂にともない胆道閉鎖症チェックのための便色カード添付が義務化されました。中島さんはカードのイラストやポスターのデザインをされているわけですね。
中島:色の問題は大変です。勉強になります。現在のところパイロット版の便色カードを作成しました。赤ちゃんの便色のチャート部分を母子健康手帳用に反映させています。
――厚生労働省から出ている通知にはJapan Colorなどの印刷条件が定められていますが、気をつけたことはありますか。
中島:私が気をつけたのは、色だけでなくお母様方にも親しみが持てるかわいらしいイラストを使ったデザインにしたことです。
――ポスターも手がけられているとか。
中島:ポスターもパイロット版を作ったところです。A2サイズで近いうち多くの病院内に貼られるそうで、楽しみにしています。
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――その他の現在の主な仕事を教えてください。
中島:テイストが合えば簡単なカットくらいは描きます。今はデザインものも多いけれど、中国の大連にいるオペレーター向けにフォーマット作成や版面設計などのディレクションもしています。
――デザインよりディレクションのほうが仕事の比率が大きい?
中島:指示書もコミュニケーションツールの一つだと思います。私の提出した指示書に対してオペレーターの反応によりうまくコミュニケーションできたどうか分かります。相手に理解されないと反応が鈍くて、説明不足なのかなと反省して、どこが足りなくて、何を加えればよいのかなどを考えます。つまり指示書の作成もデザインだと思っています。
――今後の抱負を教えてください。
中島:もっと伝わるものをうまく伝えるようにしたい。文字では扱いにくい情報でもこれは面白い、すごく興味がある、というものを可視化していきたいと思います。そのためには、緻密なものもアイコンも書体も好きなので、それをうまく活用できればいいですね。たとえば電車の路線図なども見ていて面白いし、すごく興味があります。これも「伝わる」ということを主眼に置いて、インフォグラフィックで説明されるとよく分かります。自分がそこに関われるようにしていきたいと思っています。
※これからも、JAGATとなんらかの関わりのあるデザイナーやアート系の人々、またITを駆使しているビジネスキーパーソンを少しずつご紹介していきたいと思います。
【profile】
中島瑞穂
エコーインテック(株)クリエイティブデザイナー
1977年生まれ、茨城出身。製版会社の制作室勤務を経てフリーランスの後、2009年よりエコーインテック(株)入社。主に書籍、広告などのデザインを手がける。
http://echointec.com/
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