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工業統計、印刷統計などの「基幹統計」は、調査規模が大きく精度も高いが、公表時期は遅くなることから、直近の市場規模を把握することは難しい。「印刷白書」では多くの統計データを比較・検討することで、最新の印刷市場に迫っている。
4人以上の事業所の印刷産業出荷額も6兆円をキープ
「平成22年(2010年)工業統計表 概要版」(従業者4人以上の事業所に関する主要項目)が1月25日に公表された。速報版では6兆円割れと伝えられた出荷額は6兆446億42百万円に修正され、前年比も速報値の3.4%減から2.1%減に上方修正され、2009年の8.4%減に比較すると下げ幅はかなり小さくなった。
「全事業所の印刷産業出荷額は6兆円をキープ 」では、工業統計速報値から全事業所の出荷額を推計した。前年比を4人以上と同じ2.1%減と仮定して、確報値で推計し直すと6兆1899億円となる。4人以上の構成比を前年と同じ97.7%と仮定した全事業所の出荷額は6兆1869億円で、こちらも前年比2.1%減となった(図表1参照)。速報値から全事業所の出荷額は6.1兆円前後と推計していたが、実際には6.2兆円弱となるだろう。
3つの基幹統計から把握できる印刷産業の市場規模
『印刷白書2011』では、工業統計、経済産業省生産動態統計(印刷統計)、産業連関表などの各種統計を利用して、印刷産業の市場規模を推計している。調査の目的や対象の違いなどによって集計範囲は異なるが、その内訳を見ることで、3つの統計の違いが明らかになるだろう。
「工業統計」は一定の時点における製造業全体の構造を把握することを目的とした構造統計で、毎年12月31日現在で実施されている。これに対して、「印刷統計」は月々の動きを把握する目的の動態統計で、速報性を重視して標本調査で行われている。
工業統計の「製造品出荷額等」は、製造品(製造工程から出たくず・廃物を含む)出荷額、加工賃収入額、その他収入額(修理料収入、転売収入など)の合計で、消費税等内国消費税額を含んだ額である。
印刷統計の「生産金額」は、製品別内訳(出版印刷、商業印刷、証券印刷、事務用印刷、包装印刷、建装材印刷、その他の印刷)と印刷方式別内訳(凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷、フレキソ印刷、その他の印刷方式)で集計されて、両者の合計額は一致する。
その定義は「契約価格又は生産者販売価格により評価したもので、企画・編集費、製版費、製本・加工費及び紙などの印刷媒体費、積込み料、運賃、保険料、その他の諸掛りを除き、消費税を含めたもの」とされている。
「産業連関表」は1年間に国内で行われた財・サービスの産業間取引をマトリックスにした加工統計だが、推計のための基礎資料として、印刷産業に関しては工業統計と印刷統計が利用されている。
「印刷・製版・製本」部門は、「印刷業」「製版業」「製本業、印刷物加工業」「印刷関連サービス業」と、独立行政法人国立印刷局の印刷・製版・製本活動が範囲となる。
具体的には、「凸版印刷物(活版印刷物)、平版印刷物(オフセット印刷物)、凹版印刷物(グラビア印刷物)、紙以外のものに対する特殊印刷物、写真製版(写真植字業を含む)、フォトマスク、活字、鉛版、銅凹版・木版彫刻製版、官報等印刷、紙幣等印刷、印刷局広告料収入、半製品及び仕掛品」の13の細品目ごとに在庫額、屑・副産物、加工賃等を考慮しながら、「生産数量×単価」で生産額が推計される。
2011年の出荷額は6兆円割れが確実
3つの統計は、行政機関が作成する特に重要な統計として、統計法における「基幹統計」に位置付けられ、報告義務や罰則規定が設けられている。ちなみに、工業統計調査の回収率は平成21年調査で95.5%、生産動態統計調査は約94%である。
基幹統計のデータは精度に優れているが、公表時期は遅くなることがデメリットである。
現時点で工業統計の最新データは平成22年概要版で、全事業所の推計値は3月以降の「産業編」の公表を待つ必要がある。印刷統計の最新データは2011年12月確報である。
産業連関表(基本表)は総務省など10府省庁の共同事業として5年ごとに作成され、経済産業省が毎年延長推計している。「平成17年(2005年)産業連関表」をベースに、動態統計を中心に推計した「平成21年(2009年)簡易延長産業連関表」と、構造統計を中心に基本表に準拠した「平成20年(2008年)延長産業連関表」が最新版になる。
図表2は3つの統計の最新データを元に作成した、2008~2011年の印刷産業の市場規模である。2010年に下げ幅は小さくなったが、2011年の生産金額は前年比4.5%減まで拡大している。
「平成23年工業統計調査」の代わりに、2012年2月1日に実施された「平成24年経済センサス-活動調査」は、2013年1月頃に速報が公表されるが、2011年の印刷産業出荷額の6兆円割れは確実である。
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