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長年日本の実質的標準プロファイルとして運用されてきたAdobe社製のICCプロファイルも純日本製の2011プロファイルに変わろうとしている。
ここではJapan Colorについて云々コメントするつもりはないのだが、日本の印刷業にとってAdobeシステムズ社製のJapan Color 2001 ICCプロファイルは非常に大きな役割を果たしたことは事実で、大きな転換点であったといえる。欧米製のプロファイルのほとんど(SWOPやFOGRA)がGCRを多めに設定してあり、日本の墨インキで印刷しようものなら墨が多いので色成分を覆ってしまい、いわゆる墨っぽい仕上がりになってしまうのである。
欧米では墨インキの濃度が薄く、下地の色情報を透過してしまうのだが、ご存じのように日本の墨インキはものすごく濃いので、網点が重なり出すと色情報は完全にマイナスされてしまい、墨の量が多いほど彩度が落ちでしまうという問題があったのだ。
ところがAdobe製のJapan Color用ICCプロファイルは日本では常識的なリニアブラックを原則として、中間調(最小点)からシャドー(80%網点)にかけてキレイに入っており、プロファイルの作り方もバランスや色の繋がり重視で作られていたため、どんな画像にも安心して使用することが出来たのである。このプロファイルがあって初めてICCプロファイルによるRGB to CMYK変換やICCプロファイル方式のカラーマネージメントが浸透したのである。
このようにICCプロファイルというのはその作り方のコンセプトによって、色を重視したものやトーンが滑らかになるもの等ノウハウがあるのだが、前述したAdobe製2001プロファイルはバランスとトーンの繋がり重視ということが出来る。全体的にハイレベルではあるが、敢えて難を言えば「彩度が落ちる」ということであろう。
JAGATでは様々なカラーマネージメントサポートを実施しており、HPに記載してある胆道閉鎖症用便色カード 製作にも深く関わってきた。このカラー画像を変換する際には、この辺を考えて通常デフォルトになっている「知覚的」ではなく「相対的」でCMYK変換しているのだ。相対的の方が彩度は保持されるのだが、この例を考えてもご理解していただけると思う。
時代は瞬く間に過ぎ、Japan Colorも2007から2011規準が決められていった。しかし、2007のプロファイルは高額なキットを購入しないと手に入れることが出来なかったので、一般に普及するには障壁が大きかったといえる。
これを反省点にした2011では必要な情報を入力しさえすれば、誰でも無料でICCプロファイルをダウンロードできるようになったのである。米国のGRAColなどは従来からそうだったので、このようなシステムが日本でも望まれていたのだが、2011で実現したことを考えるに、みんなの努力でここまで来たかと実に感無量である。
そしてJapan Color 2011のICCプロファイルなのだが、非常にハイレベルでバランスの取れたものであるのは太鼓判である。しかし、プロファイルの運用がここまでハイレベルになってきたので、このプロファイルについての科学的な考察、実運用的な考察をこのプロファイルの開発に関わった三人にお話しを伺うセミナー「Japan Color 2011と ICCプロファイルを解説する」へ是非ご参加いただき、一歩進んだプロファイル運用をしていただきたいと切に願う次第である。
(文責:郡司 秀明)
・JapanColor2011 ICCプロファイルダウンロードページ (日本印刷産業機械工業会)
・「Japan Color 2011と ICCプロファイルを解説する」(テキスト&グラフィックス研究会セミナー)
2012年03月06日(火) 14:00-16:20 (受付は13:30より)
Japan Color 2011 CoatedのICCプロファイル作成に関与した3人にお話しを伺う。