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経営者の重要な仕事のひとつに次世代経営者の育成がある。組織を牽引する経営幹部の早期育成は、その組織の将来を大きく左右するからである。
刻々と変化する厳しい経済状況下では、さまざまな情報に敏感で、迅速な判断・対処を取るこのできる若手経営者(幹部)の存在が、決定的に重要だ。言い換えれば、自らの変化も恐れず、新たな機会を創造し、主体的に思考・行動する人材が、組織を牽引する。特に日本の企業の99.7%、雇用の約7割を占めるといわれる中小企業(中小企業白書2011)では、「革新と創造」なくして生き残ることは難しい。
○次世代経営者の発掘と育成のしくみ
しかし、こうした人材は一朝にして育たない。21世紀最初の10年は、日本の企業が「選抜型」の「経営人材育成」に投資し始めた10年だったという。産業能率大学総合研究所の2008年の調査によれば、大企業を中心とした回答企業232社中、約66%が「次世代リーダーの選抜型育成」を実施または実施予定であった。一方で、バブル崩壊後の長期不況による教育投資の削減や採用手控えによる職員構成の歪みは、次世代経営者候補である管理者層(30~40歳代の課長・非管理職上位クラス)のマネジメント能力不足を生み、事業の継続・拡大、世代交代の足かせとなっているという指摘もきく。
次世代経営者として資質のある若手人材を発掘・育成する仕組みづくりには、社内育成体制・教育体系の構築、即ち若手→中堅→管理職→経営層へと繋がる全体的なキャリアデザイン/キャリアパスが必要だ。激しく変動する社会・経済環境下、若いうちからどのようなスキル・能力を磨けば、どのようなキャリアを積むことができるのか、どのようなチャンスを活かせるのか、意識して働くのとそうでないのとでは、おのずと大きな開きが出る。例えば部門長などの事業経営者は短期的な結果を求められることが多いが、会社経営者はさらに長期的な組織の基盤づくりと事業の開発・撤退等、重い意思決定をしなければならない。「戦略的思考力」「問題解決力」「分析的思考力」「数量的分析力」「リーダーシップ能力」など、身につけなければならないことは山のようにある。選抜型の研修を早めに受け、自らが経営幹部になることを早くから意識することで、経営幹部としての心構えが備わっていく。それは、自らが事業を構築していくという自律的・能動的な働き方を意味する。
○JAGATの「選抜型経営幹部育成プログラム」
JAGATでは、1984年から28年間にわたり、「印刷後継者・経営幹部ゼミナール」を開講し、印刷会社の次世代経営幹部育成を実施してきた。これまでに588名の方々に受講いただいている。過去3年間の実績では、計44名の参加者のうち、40代が一番多く45.5%、続いて30代29.5%、50代18.2%、20代6.8%だった。役職の最多は課長クラスで31.8%、部長クラス22.7%、一般役員クラス18.2%、工場長クラス6.8%、専務・常務クラス6.8%、主任・係長クラス4.5%と続く。カリキュラムは、以下の3点をポイントとして、整理・体系化している。
1)経営者としての意識を養う
「経営幹部の使命と役割」「社会変革と印刷業の問題・課題」「組織・人材の活性化とリーダーシップ」ほか
2)経営リテラシーを習得する
「経営戦略」「会計経理・財務分析」「生産管理・品質管理」「労務・人事管理」「環境対応」「リスク管理」ほか
3)経営者としてのスキルと実行力を身につける
「経営計画」「営業戦略の策定」「マーケティング・企画サービスの進め方」ほか
その他に業績を上げている現役経営者の話を聴く「事例研究」や全国各地から集まった同業他社の参加者同士の「意見交換」など、5月から9月までの計5回10日間(64時間)のなかで、日常では得られない貴重な体験をすることができる。より多くの次世代経営者候補にご参加いただき、困難な時代に立ち向かい、会社を担っていく意識と実力を高めていただきたい。(JAGAT教育サポート部)
■JAGAT関連セミナー
2012年5月18日(金)開講
第29期 印刷後継者・経営幹部ゼミナール
■その他
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