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日本語の組版において、文字を行に配置する、行をページに配置する、あるいは見出し・図版・表、さらに柱・ノンブルをどう配置するのか、その処理方法を規定しているのが、JIS X 4051(日本語文書の組版方法)である。
前回の説明の中にJIS X 4051(日本語文書の組版方法)という規格が出てきた。これは日本工業規格(JIS)のひとつであり、日本語の組版において、文字を行に配置する、行をページに配置する、あるいは見出し・図版・表、さらに柱・ノンブルをどう配置するのか、その処理方法を規定している。
組版処理を行うアプリケーション、例えばDTPや日本語ワードプロセッサーを開発する際に参照される規格である。しかし、日本語組版に関係する組版オペレーター、デザイナー、校正者、編集者にも参考になる。
この規格は、1993年に“JIS X 4051:1993(日本語文書の行組版方法)”として制定された。その後、1995年と2004年に2回の改正が行われている。最初の規定を第1次規格、次を第2次規格、現在の規格を第3次規格と呼んでいる。
第1次規格は、行に文字をどう配置するかということだけが規定されていたので、名称も“行組版”となっていた。縦書きやルビ・割注も規定されていなかったので、この段階では、ビジネス用文書を適用分野としていた。
第2次規格では、第1次規格を拡張し、“一般的な日本語文書の組版処理を可能とすることを目的”とした改正が行われた。縦書き、ルビ、割注、ダブ処理、圏点、添え字、縦中横処理などの規定が追加された。さらに、第2次規格からは、文字・記号の振る舞い方について性格を同じくするものでグループ化した文字クラスを考え、その文字クラスに属する文字が並んだ場合の字間はどうするか、その字間で2行に分割してよいかなどが表として示された。より詳細な規定が行われたことになる。
この文字クラスの基本的な内容は、第3次規格でも同じである。
図1に第3次規格の文字クラスを示す。
第3次規格では、熟語ルビ、漢文処理などが追加されたが、最も大きな改正は、見出し、箇条書き、注、図版、表、柱・ノンブルなどの版面及びページの処理が追加されたことである。そのため、規格の名称から“行”が削除された。
JISを読む場合、まず注意する事項として、その規格がどのような適用範囲なのかを確認することである。
同規格の“1.適用範囲”では、次のように説明している。
この規格は、JIS X 0201、JIS X 0208、JIS X 0212、JIS X 0213及びJIS X 0221-1に規定される図形文字を対象とする文字(以下、文字という。)を基本として用いた日本語文書の行、版面及びページについての基本的な組版方法を規定する。
ここでいう行の組版方法は、欧文ピッチ処理を含む1行の構成方法、及び行内での文字配置を規定している。
版面の組版方法は、段落、中扉、見出し、箇条書き、注、図・写真等、表及び訓点等のつく漢文を含む版面の構成方法、並びに版面内での文字、けい(罫)線及び図・写真等の配置方法を規定している。
ページの組版方法は、柱、ノンブル及び版面を含むページの構成方法、及び配置方法を規定している。
ここで規定する組版方法は、主に書籍に適用する。
また、JISでは、そこで使用する用語を定義して使用している。“定義”という項目でそれが行われているので、使用されている用語の定義を読み、どのような意味を持っているか確認しながら読むようにする、とよい。
JIS X 4051で規定されている内容をW3Cのドキュメントに反映させる取り組みがおこなわれた。W3Cの“Japanese Layout Task Force”という活動によって“Requirements for Japanese Text Layout”(略記はJLreq)の日本語版 及び英語版 が作成され、公開されている。
日本語組版の知識を持たない英語話者にも理解できるようにすることをめざして、図版も多く掲げているので、初心者にとっても参考になる。JIS X 4051と併読するとなおよい。
図1
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