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2012年の自動車需要増で、約4.6兆円の生産が誘発され、新たに16.4万人の雇用が創出される。印刷産業にも190億円の影響を及ぼす。
経済産業省は3月27日に「平成22年簡易延長産業連関表」と「平成21年延長産業連関表」を公表した。総務省など10府省庁の共同事業による「平成17年(2005年)産業連関表」を延長推計したもので、可能な限り最新時点の産業構造を反映させることで、5年ごとに作成される基本表を補完する役割をもつ。
「産業連関表」は1年間に国内で行われた財・サービスの産業間取引をマトリックスにした統計表で、工業統計などの調査統計(一次統計)を元に作成される加工統計(二次統計)である。全産業を対象とする規模の大きさから、一見しただけでは理解しにくい部分もあるが、JAGAT刊『印刷白書』では印刷需要とその経済波及効果を分析している。
「平成22年簡易延長産業連関表」(固定価格評価表)で印刷産業の需要と供給の流れを見ると、「総供給額(総需要額)」が6兆1323億円で、供給側である「国内生産額」は6兆799億円、「輸入」は525億円となった。一方、需要側から見ると、「中間需要額」が5兆9681億円、「国内最終需要」は751億円、「輸出」は892億円となった。
日本自動車工業会「2012暦年(平成24暦年)自動車国内需要見通し」によれば、2012年は東日本大震災からの回復需要などにより前年比80.5万台(乗用車、トラック、バス)の増加が見込まれるという。
自動車の需要が増加すれば、自動車産業の需要が増加するだけでなく、様々な取引の連鎖によって、様々な産業の生産が誘発される。自動車産業は特に生産波及力の大きい産業で、最終需要が1単位増加すると、乗用車が2.9375倍、その他の自動車が2.9115倍、自動車部品・同付属品が2.8413倍の効果を及ぼす(平成22年、全産業平均は1.9324倍)。つまり、多くの産業から原材料等を購入し、しかも購入する原材料も生産波及力が大きいことによる。
経済産業省は最新の延長産業連関表により、「自動車需要台数増加に伴う国内生産への影響」を公表した。四輪車80.5万台増による経済効果を試算すると、国内の自動車販売額が約1.6兆円増加し、自動車部品やディーラーなどサービス部門も含めると約4.6兆円の生産を誘発し、新たに16.4万人の雇用が創出されるという。
この効果を部門別に見ると、「乗用車」「自動車部品」に次いで、「卸売」(生産誘発額3143億円)が第3位、「小売」(同2597億円)が第5位となっている。なお、「印刷・製版・製本」は第29位(同190億円)との試算である。つまり、自動車需要台数増加によって、印刷産業には190億円の生産額が必要とされることが分かる。
『印刷白書2011 』 では、「延長産業連関表から見た印刷需要と経済波及効果」を豊富な図版により分かりやすく解説しています。ぜひご参照ください。