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電子書籍で期待されるものに、専門書や個人出版など小規模出版の電子化がある。小規模出版と印刷会社の電子出版ビジネスについて、フィットの藤原広光氏に話を伺った。
電子書籍で注目されているものに、iPhone、iPadなど新しい端末を利用した配信・課金スキームがある。また、既存の制作・出版・流通を通さずに、誰でも簡単に書籍を配信・販売できる出版ビジネスの素人化が始まっている。これらの状況は印刷会社にとっても、新たな印刷ビジネスを生み出すチャンスである。例えば、あるコンサルティング会社では、毎月2色刷りで30ページ程度のレポートを発刊し、印刷会社が月800部を製作・送付している。バックナンバーを読みたいという会員企業の要望には対応できていなかった。
今、バックナンバーを電子書籍化して、配信できるよう検討している。また、電子書籍で見て、やはり紙で欲しいという場合は、オンデマンドで製作・販売すればよい。今まで800部で終わっていた印刷の仕事が、電子書籍と組み合わせることでプラスアルファの印刷ビジネスが生まれる。
フィットでは、既存コンテンツを電子書籍化し、配信・課金するビジネスを提案している。そのためには、不正コピーを防止し、著作権を守るソリューションが必要である。
AeroBrowserという、コンテンツの著作権を守るオリジナルのビューアーを開発した。フィットの電子書籍はPDFを変換し、さらに暗号化する。
このビューアーは、常にサーバーに問い合わせ、正規に取得したコンテンツかどうかを判断し、正規のものだけを読むことができる。権限がなければ、AeroBrowser自体がデータを削除する。このビューアーはAppStoreにて無償配布している。
大手企業では、営業マンにiPadを支給して、製品ガイドやマニュアルなど機密情報を持たせるような利用法が始まっている。万一、iPadがカバンごと紛失や盗難にあった場合、iPadの固体番号を識別しているので、サーバー側に紛失フラグを立てるだけでデータが削除される。使用期限なども、サーバー側でコントロールできるシステムとなっている。コンテンツはテキスト抽出できないようにベクトル図形化するが、テキスト情報を暗号化して保持し、検索も可能である。
SymStoreは、課金ビジネスのための配信プラットフォームであり、iPad、iPhone、PC、Andoroid、EPUBなどマルチデバイス対応である。ブックオンデマンド、受注生産の出版も可能である。最大の特徴は、完全原稿PDFがあれば、低コストで電子書籍ビジネスができることである。
印刷会社にお願いしたいのは、クライアントにお声掛けをして、200~300円で売れそうなコンテンツを利用して、電子書籍ビジネスにチャレンジしてみないかという話である。販売実績に応じて、フィットは印刷会社に70%を支払う。そこから先、クライアントと折半にするかを決めていただければいい。
最初にかかる費用は、電子書籍の変換費用と登録費用である。登録費用は1書籍1000円である。変換費用は3000円+40円×ページ数である。100ページなら、変換費用7000円と1000円の登録料で電子書籍ビジネスが開始できる。電子書籍ビジネスにおいて、変換料でお金を儲けようと思ってはいけない。たくさん売れて、その分お金が入ってくるのが電子書籍のビジネスである。そう考えると、電子書籍ビジネスの敷居が低く感じるだろう。
(『JAGAT info』2012年2月号より抜粋・テキスト&グラフィックス研究会)