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カタログ活用手法の変化と共創時代のマーケティング
通販市場は12 年連続拡大、テレビ通販が好調
2010 年度の通販市場規模は12 年連続成長の4兆6700 億円だった。前年度比は8.4%増である。テレビ通販企業が前年度比12.9%増と大きく伸びたことが市場全体の伸びを牽引した。また、BtoB企業も7.2%増と平均を上回る成長率だった。国内小売業に占める通販の割合は2009 年時点で3.3%と確実にシェアを高めている。しかも、この市場規模は物販だけで、チケット予約やコンテンツのダウンロードなどの非物販は含まれない。ネット通販の推定市場規模は15%増の2 兆円前後との見方が有力で、通販市場では45%前後がネット経由で流通していることになる。大手書店サイトの送料無料化やEC ファッションサイトの伸長、エコポイントによる家電特需がネット通販を伸ばした要因と見られる。
カタログの創刊は活発、狭く、深く、効率的にカタログ通販では女性ターゲットの更なる細分化の動きが特徴的だ。いわゆるF1 層(女性20~ 34 歳)は購買意欲が高く、客層の高齢化を防ぐためにも各社はこの層の取り込みを戦略的に狙ってきた。さらに、10 代後半や20 代前半のような、より若年層をターゲットにカタログを創刊する動きが続いている。海外発のファストファッションもこの層をターゲットとする。
大手通販会社はWeb とモバイルである程度の手ごたえをつかんでからカタログを創刊、よりターゲットを絞って有効に届け、購買に結びつける手法で功を奏している事例が多い。若年層向けで購買意欲の高いロイヤルカタログも創刊されるなど、創刊の動きは活発だ。ただし有効性を求めてセグメントが狭く、部数が小さくなる傾向にある。
SNS の活用などマルチチャネル展開が更に進む
通販会社は生活者と直接の接点を持たないため、生活者の動向を直接把握できないことが泣き所とされてきた。そこで、最近は通販会社が小売店舗を出店する動きが増えてきた。顧客の生の声が聞ける、その声を商品開発に生かせるなどのメリットを期待できる。また、テレビや動画を有効活用し、Web、モバイル、カタログを組み合わせる事例が増えている。携帯電話は発注ツールとして使われるケースが多い。スマートフォンは便利だが、パソコンより画面の大きさが限られ情報量が少ない、アイコンが小さく誤操作しやすいなど課題も多く、各社が活用法を模索している。ツイッターやフェイスブック、ミクシィなどSNS 活用の動きも活発だ。売り上げにすぐ結び付くわけではないが、その双方向性はマーケティングなどに有用だ。
双方向性を生かしたマーケティングの時代
千趣会は千趣会のファン4 万人からなるファンサイト「ベルメゾンデッセ」を運営している。1日の平均訪問者数は約3500 名、PV 数は1 万8000 、30 ~ 40 代の女性が8 割を占める匿名制・会員制のWeb サイトだ。カタログなどから買い物サイトへ送客サイトの位置付けにあり、会員同士の交流機能、疑問などを会員たち自身で解決していく機能、商品開発に生かすためのマーケティング機能などを備え、千趣会のファンを育て、増やす役割を担っている。SNS のようなネットワークの充実に伴い、生活者と企業が商品を共創していく時代を迎えるとの見方が有力だ。今後は効率的なマーケティングを求め、双方向性を生かした独自手法で情報を収集しロイヤルカスタマーを育成する手法の重要性が高まっていくだろう。
2011年10月27日 プリンティング・マーケティング研究会ミーティング「通販市場におけるカタログ戦略とメディア最新動向」渡辺友絵氏、坂本典子氏講演より (研究調査部 藤井建人)