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高いインターネット利用率に伴って、韓国ではWeb to Printサービス形態が出揃う前から、印刷データ入稿方法としてCDやUSBとは別にインターネットを利用する方法が使われてきた。
韓国イルジンPMS株式会社
李 在秀
韓国でのインターネット使用はTVを見ることぐらい自然なものごとになった。 統計庁が発表した資料によれば、2010年度基準で月額所得が200~300万ウォンの家庭におけるコンピューター保有比率は96.2%で、年代別のインターネット利用率は10代、20代で99.9%、30代99.3%、さらに10才未満の児童でも85.5%となっている。 このような高いインターネット利用率に伴って、韓国ではWeb to Printサービス形態が出揃う前から、印刷データ入稿方法としてCDやUSBとは別にインターネットを利用する方法が使われてきた。
韓国印刷市場で使われているWeb to Printサービス形態の大部分は、インターネット上で見積もりを作成して、最終消費者(顧客)が印刷データを伝送して発注する方式である。
ソウル中心街で合版印刷(※注)専門とするある印刷会社はWebサイト内で印刷用紙、印刷サイズ、色別印刷の有無以外のオフセット、デジタル、マスターなどの印刷方式も選択することができるところまでに発展した。 高付加価値のためのインラインコーティングの使用や後工程までも自由に選択できて、最終消費者(顧客)が望む多様な形態の印刷物を製作することができる。
Webサイト上で簡単なクリックで、見積もりの確認ができるし、発注ボタンをクリックして、データを送れば、製版から出庫直前まで、顧客が発注した作業物がどこの段階まで進んでいるのかをリアルタイムで確認できる。宅配サービスの利用で、全国配送も可能なので地域的な限界もなくなった。この印刷会社の関係者の話によると、最近、海外からも注文が入ってきているという。
Webベースのアプリケーションを活用し、テンプレートを用意して比較的簡単な印刷物である名刺、チラシなどをデザインスキルが不十分な一般人でも簡単に製作できるサービスも存在する。 テンプレートに多様なパターン事例を掲載しておけば、発注者の気にいったデザインを自分で選択し制作する形態のサービスである。 特徴的なのは発注者がテンプレートを使用して製作したデータを専門のデザイナーが修正、再作成することによって、さらに満足度の高い印刷物を作ることができるようにするという点だ。 テンプレートを活用した発注物はオフセット印刷物より、垂れ幕、個人アルバム製作のようなデジタル印刷では、さらに活用度が高くなると見込まれている。
数十ページに至る印刷データをインターネットで伝送するにはデータ容量が大きくて困難な場合があり、大容量データ伝送を可能にする「Webhard(ウェブハード)」というサービスもある。
メール転送ではデータが大きく、CDなどで渡すためには人が直接訪ねて行かなければならない煩わしさ、あるいは郵便、宅配サービス利用するのでは、当日内の渡しが不可能なこともある。 このような場合に、通常ではFTPサーバーを利用することになるが、普段は利用が少ない会社がFTPサーバーを構築するには設備投資費、維持管理費も掛かるし、メールにリンクをかけて転送する方法もコンピューター知識がなければ容易なことでない。
このようなときに大容量データ伝達サービスとして、韓国では‘Webhard’というサービスが一般的になっている。これは、KT(Korea Telecom)が提供するサービスで、安い月利用料だけ支払えば大容量のデータストレージをレンタルできる方式である。 インターネット接続が可能ならば、ホームページでIDとパスワードを入力し、誰でも簡単に接続できる。それら事例として、印刷会社がアカウントを作って、顧客とIDとパスワードを共有し、データのやりとりをする方式で活用されている。
このような多様なサービスの発展でデジタル印刷の進展がさらに進行すると思われる。
※注:合板印刷
韓国では、名刺やチラシなどいくつかの顧客の広告印刷物等を同一版上に付け合わせをして刷版を作ることを合板と呼ぶ。いわゆるギャンギングのこと。