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JAGATが公益社団法人としてスタートして1カ月が経った。これまでと何が違うのか、JAGATは何をすべきなのか。公益法人としてのあり方を考えてみたい。【JAGAT大会・特集4】
公益(public interest)とは、公共の利益、社会一般の利益を意味する。対概念は私益であり、一個人の利益や私利を意味する。また特定の業界などに限定された共益(共同の利益)という概念がある。
公益社団法人としては、会員企業のための事業を行うだけでなく、その枠を超えた「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」公益事業を行わなければいけない。つまり、団体としての事業活動により、社会に役立つことが「公益」を構成することになる。
JAGATが公益社団法人として目指すものとは、「印刷ならびにメディア分野に関する利用技術の向上および人材育成、それによる中小印刷業と関連産業の健全な発展に貢献し、文化向上にも寄与していくこと」である。
2012年4月から母子手帳の改訂で、胆道閉鎖症チェックの便色カード添付が義務付けられた。具体的な社会貢献として、JAGATではカードの色管理支援(カラーマネジメント協力)を始めた。
スマートフォンやタブレットがより生活の中に浸透し、それを享受する環境も変化している。個人が情報を発信できる時代になっているが、では情報を受け取った側はどのような反応があるのか。まだまだメディアに関しては、新しい仕組みと今までの仕組みが同居している状態が続いているように思える。
新しいコミュニケーションのあり方は、伝える内容によって適不適が出てくるだろうし、最適解を提供できるところがビジネスモデル創出の可能性を秘めているのではないか。それはどのように情報を提供するかという伝え方であり、伝える力が課題になってくるのだろう。
故塚田益男・第2代会長は、45年以上前にJAGATの社団法人格に奔走し、その苦労話は語り草になっており、現在の公益認定の話にも相通じるところがある。
塚田益男元会長は、その当時から社会に貢献する印刷界のあるべき姿について語っていた。著書『印刷経営のビジョン』(JAGAT刊、1985年)の中で、既に「印刷文化」について述べている箇所がある。
文化の定義を諸橋轍次編『広漢和辞典』を引用しつつ「理想実現への人間の行動と、その結果としての総合体」としている。そこにはもちろん印刷人としての誇りをもつことにも触れている。
さらに「印刷文化は天から降ってくるものではないし、何となく昔からあるものでもない」として、「我々の努力によって、印刷物が、日本の道徳、思想、生活環境など、すべてを向上させるのに役立っているのなら、まさに日本の印刷文化は存在する。その結果、印刷および関連業に携わるみんなの生活やモラルが高い水準に維持されるなら、印刷文化は社会的に認知されたことになる」と語っている。
またJAGAT機関誌『JAGAT info』2012年2月号の特集記事「JAGATが公益法人としてスタートするにあたって」では、浅野健会長と塚田司郎副会長の対談を掲載している。
公益社団法人に移行したJAGATが何を行うかについて、浅野会長は「人類の文化にコミュニケーションがどう貢献し、どう影響を受けてきたかという本当に基礎的なことを地道に世に発表していくと同時に、テクノロジーについてと、その両面の調査研究である。さらにそれに基づいた社会への提言、教育がある」と述べている。
そしてそれを受けて塚田副会長は「印刷物を作るだけでなく、結果として社会にどれだけの貢献をしたのかというような観点に企業活動も変わっていくだろう。そうした企業の活動、社会のニーズの変化に対して、応えられるように当協会も変わっていくべきであろう」としている。
時代は変わったが、変えるべきところと変えてはいけないところを見極めて、公益社団法人としての活動方針を見据えていきたい。
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■関連イベント
「JAGAT大会2012 印刷の新機軸~価値創造へ向けて」
2012年6月22日(金)東京コンファレンスセンター・品川にて開催!
公益社団法人として新たにスタートした今回の「JAGAT大会2012」では、皆様とともに公益性の追求と、新たな時代の印刷経営を考えていきます。