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中点の代表的な使用例は、語句の併記を示す用法である。
縦組か横組かの組方向は、書籍では原稿編集(原稿整理)の段階で決定している。その方針に従って約物の使い方などは、整理すればよい。しかし、電子書籍では、読者側で組方向を変更できる場合も多く、組方向によって約物の使い方で問題がでることが考えられる。
ここでは中点(・)について、どんな問題があるか、いくつかのケースを取り上げてみる。
なお、“・”の呼称としては、JIS X 0213では参考として日本語名称に“中点(なかてん)”を採用している。出版や印刷の現場では“中黒(なかぐろ)”と呼ばれることも多い。このほか、中(なか)ポツ、ポツなどといった呼び方もある。
中点の代表的な使用例は、語句の併記を示す用法である。一般的な例であれば、どちらの組方向にしても問題はでない。
例:編集・デザイン・組版の作業
外国人名を片仮名表記する場合の姓名の区切りとして中点はよく利用する。これも問題はでない。
例:ダニエル・デフォー
外国人名の片仮名表記の一部をイニシャルにした場合に問題になる。横組では、一般にイニシャルを示す大文字の直後に省略を示すピリオドが付く。
横組の例を図1に示す。
横組では2か3の例が多い(2の例では、ピリオドの字幅を全角にするとピリオドの後ろがあき過ぎとなるので避けた方がよい)。4はピリオドと中点が連続し、区切りが二重になった感じになる。
縦組にした場合を図2に示す。
縦組でイニシャルに省略符のピリオドを付けるのは配置に問題があり、省略符を付けないで、区切り記号の中点だけとしている1の例が多い。省略符を付ける例はあまりないが、無理をして付けると2や3のようになる。
したがって、横組だけを考えれば、2または3でよいが、縦・横併用を考慮した場合は、1にした方がよいであろう。
図1:片仮名人名、横組の例
図2:片仮名人名、縦組の例
縦組においては、中点に小数点の用法もある。一般に、漢数字の場合の小数点としての使用例が多いが、アラビア数字の場合にも使用する。この場合、中点の前後はベタ組(字幅は二分)とするのが望ましい。
横組では、小数を漢数字で表記することはほとんどなく、アラビア数字を用いる。この場合、日本においては小数点はピリオドである。なお、横組における小数点のピリオドの前後はベタ組であるが、字幅を二分とした例もある。字幅を全角とすると、ピリオドの後ろがあき過ぎとなるので避ける。
原稿段階で横組の表記形と縦組の表記形の2つを準備し、組方向によって変化して表示できるのが望ましい。縦・横併用を考慮した場合は、横組に合わせて、縦組では文字の向きを変えれば解決できる。しかし、誤読は避けられるとしても、これはあまり読みやすいとはいえない。
図3にいくつかの例を示す。
図3:小数点の例
中点は、数式や化学式でも使用する。横組での使用例が多いが、これを縦組とする場合は、文字の向きを90度回転させて、横組と同じような方法で配置することで解決できる。