本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
成長する印刷通販ビジネス
印刷通販市場が拡大している。国内の推定市場規模数百億円と言われ、参入企業も確実に増えている。工業統計によると国内印刷出荷額は約6兆円なので、現時点で印刷通販のシェアはまだ1%未満である。全ての印刷発注が印刷通販に置き換わるわけはないだろうが、当面はまだシェアを伸ばしそうだ。
印刷通販とWeb to Printの意味はしばしば混同される。Web to Printは大きくB to B向けとB to C向けに分けられ、Web to PrintにおけるB to C向けが世間一般に言われる印刷通販と捉えればよいだろう。
したがって、前述のシェア1%未満とはB to C向け市場だけを指している。現在はB to B向け市場も立ち上がってきている途上と見られるが、日本のB to B向けWeb to Printは米国に比べて普及が遅いと言われる。その背景には、Web to Printソフトの少なさ、日本語の特殊性、商慣習の違いなどがあるようだ。
日本でWeb to Printソフトウェアを開発するJSPIRITSは、Web to Printシステムを「受注から印刷・加工・出荷までの生産とビジネスロジックを、いかに人手を介さずに合理化できるかがポイントという。
10数人で10年の印刷通販実績-シュービ
印刷通販に取り組むのは、テレビCMや新聞広告を打てるような印刷会社ばかりではない。神奈川のシュービは従業員10数人で印刷通販に取り組み、既に10年の実績がある。
社長の村田俊夫氏は、小さな会社こそ通販に取り組むべきと考えている。中小零細印刷会社は大手印刷会社のように営業コストを掛けられない。だからこそ、ITを活用して効率的な営業活動をすべきと言う。
印刷通販では、営業担当者の人件費は減る一方、リスティング広告などインターネット上での販促費は増えるので、このバランスや集客のキャッチコピーを考えるのに知恵を絞ることになる。
発注者は意外に神奈川や東京など会社近隣が多い。通販といえども、その気になればすぐに顔を合わせられる安心感は大切で、印刷通販でもフットワークの軽さはあったほうが良いようだ。
後発として特色を打ち出す-ネットDEコム
東京都北区の新晃社は、印刷通販を始めて約1年だ。従来型の御用聞き営業の業務は「作業票の起票」であると分析、社内システムをWebへ開放しようと印刷通販を始めた。サイト名「ネットDEコム」は、ネット上で印刷工務をお客様が行うイメージから付けた。
印刷通販サイトとしては後発であり、立ち上げ後、一定の知名度を得るまでは相当な販促費を投下した。売上高が損益分岐点に近づくまでにかなりの支出が先行した経験から、「印刷通販ビジネスは経営者の胆力が試される」という。
後発として、企業ウケ、女性ウケを狙うなど特色を明確にした。かわいいマスコットキャラクター「でこぴょん」を誕生させた。文具を買えるポイントシステムも導入した。フェイスブックなどSNSをフル活用している。顔が見えないネットだからこそ、どうやってお客様とつながるかだ。カスタマーセンターの充実にも配慮している。
受注の平均単価は3万円に満たない。しかし、印刷通販は思わぬ大口顧客との取引開始のきっかけになるときがあると言い、小ロットの効率受注だけでなく、大口顧客との営業接点の役割もある点にも注目したい。
2012年2月16日 プリンティング・マーケティング研究会ミーティング「印刷通販会社の最新動向」より。(文責:JAGAT研究調査部 藤井建人)