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メディアが多様化し、新たなプラットフォームが登場する中で利用方法も多様化している。新聞社の電子メディア戦略も一様ではなく、新たなビジネスモデルを模索している。【JAGAT大会・特集6】
日本でのソーシャルメディアは、1999年の2ちゃんねる、発言小町などの電子掲示板の開設から始まって、2002年ごろからブログが急速に普及し、2006年には日本語ブログの投稿数が英語を抜いて世界最多となった(「The State of the Live Web, April 2007」)。その後もmixi、Twitter、Facebookと、次々と新たなプラットフォームが注目されて、個人としての利用だけでなく、企業や団体による利用も進んでいる。
「発言小町」は読売新聞社が運営するニュースサイト「ヨミウリ・オンライン」内の女性向け情報サイト「大手小町」の投稿コーナーで、1999年10月にスタートした。「大手小町10年の歩み」の中で「当初、トピック数は13本、返信を合わせても38本しか投稿がなく、続けていけるのか不安だった」と振り返っているが、2007年2月には月間4000万PVを達成し、以降右肩上がりに増加し、2008年5月には「大手小町」全体で初めて1億PVを突破した。
投稿内容は、日常生活のささいな疑問から恋愛相談、人間関係の悩み、日ごろの愚痴など多種多様だが、全ての投稿は専従スタッフがチェックして、誹謗中傷や読者を傷つけるような投稿は掲載を拒否したり、編集してから掲載する。一般的な匿名掲示板とは一線を画すこの方針によって、逆に多くの投稿者が集まる結果となっている。
2010年3月創刊の『日本経済新聞電子版』に次いで、全国紙、一般紙として初めての『朝日新聞デジタル』が2011年5月18日に創刊された。その翌日、読売新聞社は中学受験応援サイト「読売受験サポート」を開設した。「ヨミウリ・オンライン」の教育コーナーを発展させて、新聞紙面では日常的には扱いにくい受験情報の専門サイトとして立ち上げたもので、読売新聞や「読売KODOMO新聞」を使った時事問題対策のコーナーもある。
「読売KODOMO新聞」は、新聞の活用が明記された小学校の新学習指導要領に合わせて2011年3月に創刊された(毎週木曜発刊、タブロイド判16ページ、月額500円)。小学生向けの雑誌作りに定評がある小学館に5ページ分の編集を委託し、東京の大手進学塾・四谷大塚の協力で学習意欲を高められるページを設けるなど、小学生に習慣として新聞に親しんでもらうことを目指すとともに、学校の授業での教材としても利用できる内容となっている。
「読売受験サポート」は、プレミアムコンテンツを有料化、新聞読者には割引料金で公開するもので、2009年10月開設の医療サイト「ヨミドクター」と同じ課金システムとなっている。他紙が電子新聞を本格化するのに対して、読売新聞は新聞のコンテンツを活用して専門サイトでの細かな課金を積み重ねる戦略を採っている。
また、新聞購読者へのサービスを基本とする姿勢を崩さない。2006年に開始した無料会員制サービス「ヨリモ」でも、一般会員(読売新聞を購読していない会員)、読者会員(定期購読2年未満)、長期読者会員(同2年以上)の3種類に分けて差別化している。
さらにこの5月14日に、スマートフォンで読売新聞の主要記事が読める「読売プレミアム」と、電子書籍を販売するオンライン書店「本よみうり堂デジタル」をスタートさせた。
「読売プレミアム」は読売新聞購読者向けの会員サービスで、新聞購読料プラス月額会費157円(10月末まで会費無料)で、最新のニュースやこれまでネットで配信していなかった連載記事や人気のコラムを読むことができる。「本よみうり堂デジタル」では、読売新聞の連載をまとめたオリジナル電子書籍や、中央公論新社など主要出版社の文芸、実用書、コミック、写真集など、約4万点を取り扱っていて、年内には国内最大級の電子書店を目指すという。
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■関連イベント「JAGAT大会2012 」
2012年6月22日(金)東京コンファレンスセンター・品川にて開催決定!
第2部 クロスメディア分科会「電子販促・電子出版時代のビジネスを考える」では、
読売新聞東京本社メディア戦略局IT事業部次長の小野寺昭雄氏がスピーカーを務めます。
小野寺氏はヨミウリ・オンラインのニュース配信、教育サイト「読売受験サポート」の立ち上げなどを担当。2011年から電子書籍制作を手掛ける一方、電子書店「本よみうり堂デジタル」の開設・運営を行っています。