本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
経営者の最大の仕事は後継者育成である。中小企業にとってはさまざまな問題があるが、事業継続、事業拡大のためには、何より優先しなければならないのが後継者の決定とその環境作りであろう。社内、社外のいろいろな機会を捉え、性急過ぎず、かつタイミングを逃さない後継者育成が必要である。
悩み多き後継者
ある地方の小企業の印刷会社の話だが、社長は息子に後を継がせたいが、本人が決断を渋っていて、このままではほかの決断もしなければならないが、そちらもそれほど簡単ではないと言う。血縁以外の後継者の場合、事業の継続以上に、資産の引継ぎを巡る問題が大きいとのこと。そのためには後継者として子供であることが最適であるが、それには事業内容、経営理念などの理解が前提になることは当然であろう。
全国商工会連合会・日本商工会議所では後継者を探している事業者と後継者(起業家)をお見合いさせる「後継者人材マッチング」サイトを設けている(
http://kokei.shokokai.or.jp/
)。
双方の情報を提供するとともに、匿名連絡掲示板機能を使って、匿名のままで事業者と自由にコミュニケーションできる場を提供し、さらにコーディネーター経由での交渉や直接交渉をサポートしている。東京商工会議所の「後継者問題に関する実態調査」(2003年1月)でも、後継者が不在の企業に対する今後の状況については、「廃業を検討している」が37.6%、「企業売却を検討していいる」が24.8%との調査結果が出ている。
後継者+右腕の育成、一人ではダメ
後継者が決まっている企業にとっても、その体制作りや交代時期が難しいという。前出の調査によると「円滑な事業継承のために適当と思われる年代」は「40代」が圧倒的に多い(51.2%)。若くても年を取り過ぎてもと考えると40代が能力、人格、体力とも良さそうだ。
当然、社長一人で経営をするわけではないので、ブレーンが重要である。日本商工会議所の調査「成長する中小企業における人材の確保と育成」(2000年3月)でも、「中小企業が、競争力を強めたり事業を拡大するためには、経営者一人の力量では足りずに、右腕となるような人材が必要となることが示唆される」と分析。「右腕への人材ニーズ」は、現状維持企業では66.5%であるのに対して、事業の拡大を考えている企業では82.7%と高くなる。右腕に期待している職務能力(複数回答)では、達成行動力(15.6%)、企画・発想力(14.1%)、状況把握力(13.5%)、思考判断力(12.2%)などが期待されている。
人材育成、特に後継者作り(体制作り、ブレーン作り)は時間の掛かるものである。計画はじっくり状況を見つつ性急過ぎず、かつタイミングを外さないように進めることが大切である。
500人以上が集う歴史と実績の講座
JAGATでは20年以上にわたり、中小印刷会社の後継者および経営幹部候補生への研修講座を開講してきた。1984年の第1期から2007年開催の24期までの参加者は延べ518人に達し、何人もの経営者を輩出している。当研修の目的は、①将来の経営者、経営幹部として必要な経営管理知識を総合的な視野で養う、②全国規模での印刷人同士の仲間作り・ネットワーク作りの機会としている。この目的にあるように、OBたちは異口同音に「今までの部門的視野から離れ、会社全体を見るための視点と知識の概要がつかめた」「幹部候補生としての覚悟ができた」、そして何より「同じ立場、同じプレーシャー、同じ悩みを持つ仲間ができた」と言う。
20期から24期までの5年間の参加者122人の属性から、幹部候補生たちのプロフィールを下表にまとめた。30代の参加者が36.1%と最も多く、次いで40代28.7%、50代27.0%となっている。20代の8.2%は後継者の方である。ここ5年の傾向として30代の参加が増えてきていて、中堅の方々への期待が高まってきていると言える。
参加時点での印刷業界経験年数は、実務に15年以上携わっている方が57.4%と半数以上となっている。後継者の場合は、他業種での経験を経て、入社5年以下という場合が多い。
参加者の所属部署は、営業が47.5%と最も多く、続いて制作21.3%、製造14.8%、総務・管理11.5%となっている。企画・制作部門からの参加が増えてきているのは、各社の重要課題が企画提案にあることと重なっていると思われる。
参加者の役職は、部長職・課長職を合わせると73.0%で、中間管理職から幹部になるにふさわしい方々が選抜されて参加している。一般職からの参加は若手後継者の場合である。
印刷後継者・経営幹部ゼミナールは、各期ともほぼ上記のような参加者特性となっている。営業職や製造部門などそれぞれの専門職を務めてこられた方に、経営幹部としての総合力を身に着けていただくことを念頭にカリキュラムを組んでいる。
日本各地から集まった参加者が、6カ月間に及ぶ研修をとおして、会社の違い、各社の強み・弱みを本音で語り合い、仲間意識を高め、長年のパートナーが得られる場ともなっている。
若い世代や経験の浅い参加者は、「ベテラン」と呼ばれる方々が培ってこられたノウハウや経験を学べる一方で、ベテランや年長者は、若い世代の考え方を理解できるなど、講義知識以外にも「プラスアルファ」が得られる絶好の機会となっている。
「第25期印刷後継者・経営幹部ゼミナール」は2008年5月より開催いたします。次代の印刷経営を担う人材を養成します。問い合わせは印刷経営幹部ゼミ事務局まで(TEL
03-3384-3112)。
詳細はJAGATサイトをご覧ください( http://www.jagat.or.jp/event/kosyu/ )