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長い歴史をもち、技術力に自信のある企業だからこそ、顧客に新たな価値を提供するための取り組みを始めている。【JAGAT大会・特集8】
「クリエイティビティ」を基軸に新事業部を発足
大正10年創業の山口証券印刷は、乗車券印刷の分野で90年を超える歴史をもつ。2003年に本社を発祥の地でもある千代田区外神田に移転し、企画・デザイン・編集・商品開発を行うINCENX(インセンクス)事業部を発足させた。
INCENXとは、Incentive(人に行動を起こさせる動機、刺激)とWorks(良い仕事)を合体した名称である。「クリエイティビティ」を基軸に、印刷物だけでなく、2D/3D、動画、Web、サイン、ノベルティーなどを提供している。
同事業部Creative & Printingディレクターの山口誉夫氏は「顧客の差別的・戦略的意図を十分に理解し、優良で価値の高いコンテンツを提供するためにはプロデューサー、ディレクター、マーケッターが社内にいることが重要である」という。
2D/3Dのポスターやパッケージを数多く手掛けてきた同事業部では、2011年8月に神宮前に立体グラフィックアートギャラリー「XYZ(エキシズ)」 をオープンした。印刷技術に様々な加工技術をプラスさせたアートな製品に「見て、触れて、感じる」機会となることから、クライアントからの引き合いも多い。
「クリエイティビティと技術力の成果を公開することだけが目的ではない。次世代の印刷の姿を追求する一環として取り組んでいる。今後も印刷産業の発展に力を注いでいきたい」との意欲を語っている。
メイドインジャパンの「精度の文化」を商品化
墨田区本所の伊藤バインダリーは創業55年の製本会社。本や冊子などの製本を手がけて、「知名度の低い業種だが、その技術力は奥深く、紙媒体の根底を支えている」ことを誇りとしてきた。
創業社長の三代目に当たる伊藤雅樹常務は、新たな試みとして「あったらいいな! こんなものできちゃった!」を合言葉に、職人技を生かした商品開発にも乗り出した。
2009年には、ダンボール古紙を原料とする台紙を使った「ドローイングパッド」と「上質メモブロック」の販売を開始した。「紙束の存在感、緊張感のある端面の美しさ」が高く評価され、「2010年度グッドデザイン賞」も受賞している。
「ドローイングパッド」は、綴じ部分に切り取りミシン加工がされ、切り取ると定型サイズになる。「商品企画当初、廃材となるボール紙を使って多種の試作を重ねるだびに、ボール紙の素朴な風合いに魅力を感じ、その存在感に新たな利用価値を見出した商品」で、表紙を付けていないことで、デッサンやスケッチ作業をするクリエイターや美術関係での現場で多く利用されている。
デザイン性と機能性が海外でも評価され、2011年9月よりMoMA(ニューヨーク近代美術館)で、A5クラフト、A6白の2種が「Notepad」として販売されている。また、2012年1月にはパリで開催の国際展示会Maison&Objetに出展している。
■関連イベント「JAGAT大会2012 」
2012年6月22日(金)東京コンファレンスセンター・品川にて開催決定!
第2部 マーケティング分科会「価値創造のマーケティングを考える」では、
JAGAT刊『プリバリ印』連載「マーケティング価値校」で「印刷業の枠を越えた新事業のヒント」を伝え続けてきた郷好文氏をモデレーターに、
山口誉夫氏と伊藤雅樹氏がスピーカーを務めます。